この気持ちを押さえるために
シェールは、当一の家の庭に出て、木刀を持って素振りをした。
こんな事をしたところで、ダイヤモンドドールの力の前には、焼け石に水だというのは分かっている。
頼りになるのは、ドラゴンオブソードマウンテンになれる当一だ。
「あんな奴に力を借りるなんて……」
ついさっきまで、足でまといでしかなかった当一だが、エスカッションになれた。
当一は、生身の体で、ダイヤモンドドールの前に立ちはだかり、自分を守ってくれた。その直後に、ドラゴンオブソードマウンテンに変身をした。
「ああああぁぁぁあ! あの時の事を思い出すと!」
シェールは胸の中に浮かぶ、怒りにも似た不愉快な感覚を振り払うために、また剣の素振りをする。
「全部あいつが……」
当一が悪い。
ついさっきまで役たたずだったくせに、急にあんなに大きな力に目覚めてしまったのが、どうにも納得できない。
「私は生まれた時から剣を学んでいたのよ。それなのに、エスカッションになっただけで私よりも一気に強くなるなんて……」
口に出して言ってみると、いくらか気持ちは晴れたような気がする。
そうだ、この感情は当一に対する妬みだ。自分は血のにじむ修行を繰り返した。だが、当一の奴は、それを一気に超えるくらい強くなった。
「あの時も、ダイヤモンドドールの前に立ちはだかったりして……」
弱いままであった当一は、自分を守るためにダイヤモンドドールの前に立ちはだかった。そして……
「ああああぁぁぁぁ! もう! あの時の事を思い出すと!」
胸が痛いくらいに締め付けられる。
それを振り払うために、シェールは力いっぱい剣を振った。
屋根裏部屋の窓から、その姿を見ていたリーシア。
リーシアはシェールの事をニヤニヤと笑いながら見下ろしている
「それが恋なのよ。分かっていないの?」
リーシアも、ダイヤモンドドールの事を見たとき、絶望をした。戦う気力なんて、ちっとも沸いてこなかった。
だが、当一は違った。最後まで諦めずに戦い、シェールの事をかばいに行ったのだ。
「私も惚れそうになっちゃった……」
シェールは当一に守ってもらったのだ。きっと当一の事が一番輝いて見えたのはシェールだろう。そう考えるリーシア。
「主人の持ち物に手を出そうとするのなんて、いけないわよね」
これから、あの二人の関係は、面白くなりそうだ。
そう考えたリーシアは、製薬に戻りながらクスリと笑った。




