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お茶っ葉
だが、それもすぐに止めて、また話題を変えた。
「そういえば、祥子さんがいい葉っぱを買ってくれるって言ってくれたわ。交渉は上手くいったわよ」
「それはよかったな」
「紅茶の銘柄を聞いてみたんだけど、やっぱりこっちの世界の紅茶の名前はちんぷんかんぷんね。リプトンっていう高級紅茶らしいわ」
「思いっきり安物じゃん!」
「アールグレイとかいう安物の紅茶の方が私の好みなんだけど、それは、祥子さんが嫌いだっていうから止めておいたわ」
「アールグレイって高級茶の名前じゃなかった! 絶対お袋に騙されてるって!」
祥子の行動は、まるで子供に美味しいものの味を覚えさせないようにしているお母さんのようであった。
牡蠣は、子供が食べたら死ぬと言われて、小さな頃牡蠣を食べさせてもらえなかったのを、当一は思い出した。
祥子は、その当一を横目に美味しそうに牡蠣をほおばっていたのだ。
リーシアは、ヘビのように狡猾で賢しいイメージがあったが、実は案外騙されやすく純粋なのかもしれない。
「どうしたの? 先に降りているわよ」
リーシアがそう言って、先に屋根裏部屋から降りていき、当一はそれに続いていった。
おどろおどろしい黒のローブを着たリーシアの後姿であるが、それが当一には今回の件で少し可愛く見えてしまうのが不思議であった。




