戦いのあとに
小さく震えてから目を覚ます女の子は、ほっそりした体で幼い顔立ちの残る女の子だった。シェールが着るような装備を着ているものの、それは似合っていない。戦いに向くような女の子には見えないのだ。
「あなたはディーリアっていったわね。いきなり私と当たるなんて運が悪かったじゃない」
「シェール…学年最高位の……」
そう言った後、シェールは得意げな笑顔を当一に向けた。
『どう? これで分かったでしょう? 私は結構強いのよ』と、言っているのが分かるような笑顔だった。
学年最高位というのがどのようなものなのかは当一には分からないが、シェールは数いる候補者達の中でも上の方に存在しているのだろう。
「あなたはジェズルを倒された。それは分かるわよね?」
その子に向けて宣言をするように言う。そして、シェールは当一の方を向いて話を始める。
「この戦いにはルールがあって、敗者は、勝者の命令に従わなければならないの。候補者とそのジェズルの言う事なら何でも聞かなきゃならないのね。当一。ディーリアに今から好きなことを何でもしてもらいなさい」
「何でも……」
当一の脳裏に浮かぶのは、あられもない姿をしている彼女であった。何をしてもいいと言われると、健康な男の考える事など、大体このようなものであろう。
ほっそりとした体には、しっかりとくびれがあり、鎧の中の胸は思いのほか大きく、触れると壊れてしまいそうな肩を震わせる彼女の顔は、羞恥から赤く染まっている。
そう、妄想の世界に沈んでいた当一だが、シェールの白い目線に気付き、気をとりなおす。
だが、それに気付いたシェールは、別に気にするようでもなかった。
「私を気にする事はないわ。ちょっと離れたところに行っているからその間にやっちゃって」
シェールの言葉は、当一がこれからやらしい事を行うというのを前提にして言っている言葉だ。だが、当一はそれにこう答える。
「みそこなうな」
シェールを一瞥してそう言うと、当一は女の子の前に立った。
女の子は、不安げな顔をして当一の事を見上げていた。
そこに、ポケットの中からハンカチを出した。シェールが殴って血が滲んでいるこめかみにハンカチを当てる。
それで、不安げな顔をするのをやめて、不思議そうな顔をするようになったディーリアに向けて、当一は言う。
「何も命令なんてしない。君の自由にすればいい」