あきらめないこと
「あいつの事が好きな娘がいるのだとしたら、かまう事はないのかもしれないな……」
諦めがついた。そういうのもおかしい話かもしれない。最初から本当に好きだったわけではないし、恋人同士であったわけでもない。
自分が勝手に悩んでいるだけだ。悩んでいる理由すらも自分自身が分かっていない。完全に無駄な時間をとっただけである。
女の子は、座っていた石の上から腰を上げた。お尻に付いた砂を払って、山を降りるために歩いていった。
「どうでもいい話につきあってもらって悪かったな。薬草くらいなら好きにとってくれるといい」
それは、彼女が最後のセリフのつもりで言った言葉だ。
背中から声をかけられなければ、そうなっていたかもしれない。
「あきらめちゃだめよ」
リーシアは本来の彼女がするようにしてニヤリと笑った。自分がこんな事を言うのはおかしい事だとは彼女自身も思う。
「好きなのかどうかなんて考えるのこそが時間の無駄よ。少しでも彼の事が好きだと思うのなら、彼にもっと近づいていくべきよ。自分の気持ちを確かめるのなんて、そうしながらでもできるでしょう?」
まるで当一のような言いようであると、リーシア自身思った。彼女はどうやら、当一に影響されてしまったのかもしれない。
彼の諦めの悪さは、自分自身にも感染をしたのだ。
それに、彼女に自分の事を重ねてしまったのもあるのかもしれない。リーシア自身、レーズに「好き」と一言を伝える事もできなかったのだ。
彼女にはがんばってほしいと思う。自分が見た、バッドエンドで終わるラブストーリーの主役を、彼女に演じて欲しくはないという気持ちも強かったのだろう。
「無責任な物の言い方だぞ。こっちは気持ちの整理がついたところだっていうのに」
「私だって協力してもいいわよ。恋の秘薬の作り方を、今から学んでおくわ」
「薬に頼る気は無い……」
すっきりした直後に、またぐちゃぐちゃに戻ってしまった気持ちを苦笑に混ぜて吐き出した女の子は、重い足取りで山を降りていった。




