ラタと遭遇
『なぜだ……正面から行けばいいのになんで私はこんなこそこそしているんだ……?』
一美は、物陰から隠れながら二人の様子を窺っていた。
『二人に声をかけて『知り合いか?』と聞けばいいだけじゃないか……』
胸にもやもやしたものがたまっているのだが、どうすればこのもやもやが晴れるのかが分からない。一美は、当一の事が気になっている。なぜだかわからないが、これだけは彼女自身自覚している事である。
『あの子もか……?』
また一人当一に近づいていく女の子が見えた。
「ごきげんようですわ。シェール様にそのジェズル様」
当一とシェールの前に立ってそう言ったのは、メイド服を着た銀髪の褐色の肌を持つ女の子だ。ノエリアである。
「挨拶など不要だと言っているでしょうに」
そして、それに続いて長い黒髪の女の子も現れた。ラタの印象は、初めて見たときは、背格好をよく見る事ができなかったが、最初のイメージとは違い、体はスレンダーで背はシェールやリーシアよりも低いかもしれないくらいだ。
服装は上下ジャージ姿である。
「緊張感がないわね」
ふと、シェールは言った。
宣戦布告をした相手同士が相対しているのだ。本当ならば、ここで緊迫した空気が流れるはずであろう。
「あんたのだらしないかっこうを見ていると、なんか冷めてくるわ」
「何の事を言っているのでしょうか?」
「あんたの上下ジャージの事よ。みっともないにも程があるわ」
「利便性を追求した結果です。伸縮性と吸湿性を持った、もっとも機能的な衣服であると私は考えています」
ラタは、少しだけ自慢げな様子で言った。
「今日も、ジャージをいくつも買い込むためにここに来たのです」
そう言うラタは片手に三個ずつ、合計六個。ノエリアも手に同じだけの数の紙袋を持っていた。
「その中身は全部あなたのジャージなの?」
シェールは、ラタが自慢げに話すのを見て、あきれた様子で言った。
「全部自分のものではありません。赤いものはノエリアの分です」
「わっ……私の分でございますか! ……ありがとうございますわ……」
ノエリアは顔では笑っているが、こめかみのあたりが引きつっている。ラタはそれにまったく気付いていないようであった。
「いえいえ……お礼を言われる事ではありません」
いつもの淡々とした声で答えたのだ。




