リーシアの書き置き
シェールを連れてきた林道に来た二人は、二人で町の景色を眺めた。
「心が洗われるような景色ですね」
「身も心も綺麗になっていくだろう?」
当一は、リーシアに向けてにやりと笑って言った。
リーシアは、それに失笑にも似た含みのある笑みを作って答える。
「一度、体に染み付いた汚れは簡単には落ちませんよ」
リーシアは、頑固にも、自分の汚れは絶対に落ちないと思っているらしい。当一はそれが分かった上で不敵な笑みを浮かべてリーシアの事を見た。
「俺は諦めないぞ」
リーシアが、それを小首をかしげて聞いたのを見て、当一はさらに続けて言った。
「お前は自分が思っているほど汚れてなんかいない。自分が汚れているなんて考えの方が間違っているんだ」
当一は、おもむろにリーシアの手を取った。
「綺麗な手をしているじゃないか。この手のどこが汚れているというんだ?」
そして、当一は、リーシアの手の甲にキスをした。あまりの事にリーシアは顔を赤くする。当一はそれを、にやりと不敵な笑みを浮かべてキスをしながら見上げた。
それから、リーシアは当一の視線から逃げるようにして目を景色のほうに向ける。二人はそれから一言も会話をしなかった。
むしゃくしゃして眠れない。隣で祥子が寝息を立てている部屋。布団から起き上がったシェールは、近くにあった上着を羽織って部屋から出て行った。
シェールが台所に行くと、紅茶が置いてあった。もうすでに冷めてしまい、ぬるくなっている。
それと共に書置きが置いてあるのを見て、シェールは中身を読んでみた。
これからよろしくねシェール
私の事を信じてくれなくてもいい
だけど、私はずっとあなたに事を助けていくわ
人間が考えている事なんて一枚岩じゃない
あなたの事を壊そうとした私も私だけど、あなたの事を助けたいと思っているのも私なの
石頭のあなたには理解できないかしら?
私はあなたのそばにいれればそれで満足よ
それだけは伝えておくわ
追伸
当一ってなかなかいい男ね。私が口説いちゃってもいいかしら?
「好きにするといい」
手紙の最後の一文のみに対して答えを言ったシェールは、ティーカップを手にとってリーシアの淹れた紅茶をすすった。
「あいかわらず、これだけは上手い」
石頭のシェールは、書置きを丁寧に折り畳んだ。




