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諦めないこと

 憧れる人の力になりたい。そして、彼女の事を憎んでしまった罪滅ぼしをしたい。リーシアは心の奥底でそれを望んでいるのかもしれない。当一はそう思った。

 それは、リーシア本人でも気付くことのできなかった心の奥底にある気持ちなのかもしれない。もしかしたら、そんな気持ちは無いのかもしれない。だが、当一は信じてああいったのだ。リーシアは自分を腐っていると言ったが、完全に腐りきっているとも思いたくなかったのだ。

「お前はシェールのために働くのが一番なんじゃないか?」

 その言葉は、リーシアに死ぬまで忘れることが出来ないだろうと思うほどの強い衝撃を与えたのだ。

「ありがとうございます……」

 リーシアは、外の景色を眺める当一の横顔を見ながら、そう言った。

 リーシアは泣き出してしまいそうなくらいに嬉しかった。その時、当一の事を見つめるリーシアの視線は、少しだけ熱を帯びていた。


 リーシアは例によって、祥子にこの家で生活をする許可をあっさりともらい、当一とリーシアで一部屋シェールと祥子で同じ部屋で寝る事になった。

「シェールは私の事を信用できないようですね。当然といえば当然ですけど」

 リーシアは、寝巻き姿で床に敷いた布団を被って寝ていた。当一はベッドで寝ている。

 当一の部屋の天井を見ながら、リーシアは言った。

「あれからずっとあの調子ですね」

 シェールは当一ともリーシアとも口をきこうとしない。

「どう思ってる?」

 当一はベッドで寝ながら返事を返した。シェールに冷たい態度を取られるのは、彼女にとってこたえるはずであると考えての質問だ。

「悲しいとは思います。ですが、こうなるのはしょうがないという事だって当然分かっています」

 諦めに近い感覚だろう。彼女は、シェールに嫌われるのは当然だと思っている。

「抗うという事を知らないのか?」

 彼女は無理な事を無理だとすぐに決め付けてしまうところがある。だから、ヴィッツに復讐をする時、毒殺を選んだ。シェールと仲を元に戻したいのだというのにそれを諦めてしまい、彼女を憎む事を選んでしまった。

「それが、私が汚れてしまった理由なのでしょう。抗う事をせず、楽な事ばかりを選んで自分を貶め続けてきたのです」

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