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温かい声

 当一を椅子に座らせて、当一の患部の様子を見るリーシア。毒を吸った喉の様子を調べ、毒ガスで一番ダメージを受けるだろうと思われる目を診て、体にできた切り傷に薬を塗っていく。

「毒が使えると言う事は、薬が使えるという事でもあります」

 そう言い、リーシアは当一の傷に処置を施していった。

「シェールの事をどう思いますか?」

 リーシアは当一に聞いてきた。

「真面目くさくて、人の言う事を聞かない奴だな」

「石頭でしょう?」

 リーシアは懐かしそうにしながら言い出した。

「昔からそうなのです。だから友達も少なかったですし、しょっちゅう危ない事だってやっていました……」

『なんか、ほおっておけないのです』そう言いながら、リーシアは持ってきた紅茶をすすった。

「なぜ私を仲間にしようなどと思ったのですか? 自分で言うものではないと思いますが、私はあなたに対して、手ひどい仕打ちをしたものだと思っていますが?」

 リーシアは宿にいる当一に、自分が魔法屋だと偽ってドアを開けさせた。その後、薬を嗅がせて部屋から連れ出した。その後も洞窟の中に縄で縛って転がしておいたのだ。

「そんな事どうでもいいさ」

 当一は、リーシアから顔を外して窓の方を見た。窓から見える外の様子は、茜色の太陽が町を赤く染めている、夕焼け空の景色である。

 リーシアに向けて直接言うのは少しばかり恥ずかしいことである。顔を直視しながらそれを言う事が嫌だった当一は、鮮やかな赤い景色を見ながら言った。

「お前は、シェールの事が羨ましいんだろう?」

「……そうなのでしょうね……」

 リーシアは、彼女の曲がらない心と不屈の精神が欲しかった。それさえあれば、ヴィッツを毒殺するなどという方法を使わずに、正面からぶつかっていけたであろう。

 リーシアは、確かに成功した。だが、結果としてこれで良かったのだろうか? とも思うのだ。負けると分かった上で彼に正面から挑みにかかって、それで、予想通りに負ける事になったほうが、今よりもましな結末であったのではないかと思うのだ。

 リーシアは腐ってしまった。はいつくばるようにして生き、殺人の罪という名の汚れを被った。そして、幼馴染のシェールの事を憎み、彼女の心を叩き折る事ばかりを考えたのである。

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