リーシアの不思議な態度
レイグネンから帰ると、開口一番にシェールが言い出した。
「何があなたに命をささげますよ! 背中を刺そうとしているだけにしか思えないわ!」
「もう負けた後になってまで、そんな往生際の悪いことをしようとは思わないわ。それに、戦いから身を引くより、自分に勝った相手に従ったほうがいいっていうのが、参加者の基本思想でしょう?」
この戦いは王の座をあらそうためのものだ。
この戦いの優勝者が王になれば、従者だってそれなりの地位につけるというものである。
自分は資格を失ったのだから、コバンザメのようになっておこぼれを頂戴するのが一番いいのである。
はたから見れば全うな行動である。リーシアはニコリと笑って言い出した。
「すぐに信じてくれとは言わない。あなたの命令には従うわ。言ってくれれば、紅茶でも淹れてきましょうか?」
「あんたは師匠を紅茶で毒殺したでしょう?」
シェールはきびすを返して部屋から出て行った。
「あれは怒ってますよ。良かったのですか?」
リーシアは当一に向けて聞いた。
「いきなりしゃべり方が変わったな」
リーシアは、さっきまでは、汚い言葉こそ使わないが、皮肉と嘲りを常に纏わせるようなしゃべり方をしていたはずだ。
こっちの世界にもどってから、いきなり丁寧な言葉使いになった。
「そんな事は大した事ではないでしょうに……」
当一の言葉を聞いて、リーシアは嘆息をしたが、それでもどこか上品な振る舞いである。
リーシアは、ニコリと笑った。憎悪を浮かべたような恐ろしい笑顔しか見せてこなかった彼女が、そんな笑い方をしているのを見ると、なんだか似合わないような気がしてくる。
「当一様。お怪我を見せてください」
そう言い、リーシアはローブの中から薬とおもしきものを取り出した。




