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 あの魔法の球は、人の力で割れるようなものではない。いくらでも暴れるといい。そう思っていた。

「リーシア……お前はシェールには勝てない。俺にも勝てないようじゃ無理に決まっているよな」

 その言葉を聞いて、当一の方を見たリーシアは、球に亀裂ができているのを見た。

 その亀裂を広げるために、当一が正拳突きを放っていた。これは、一美に教わった事の一つだ。正拳突きの練習を、腕が上がらなくなるまでやらされていた。右を打ったら左を打つ。この繰り返しである。

 この繰り返しが、リーシアの作った魔法の球に亀裂を作っていたのだ。

「余計な事を……」

 リーシアがマジックワンドを使って印を切った。そうすると、当一の足元から黒い煙が上がってきた。これがリーシアの言っていた毒ガスであろう。吸うと喉が焼けるように痛くなり、煙に触れた皮膚も燃えるように熱くなる。だが、一呼吸で死にいたるようなものではないようである。当一は、喉の痛みも気にせずに大きく息を吸い込んだ。

「はあっ!」

 気合と共に放たれた当一の正拳が、リーシアの作った魔法の球を中から叩き割った。

 それと共に、狼を叩き伏せたシェールは、当一に向けてあるものを投げつけた。

「ものの役に立つところを見せてみなさい!」

 それは、当一が宿屋に置きっぱなしにしていた竹刀であった。腰に釣っていた鞘と一緒に持っていたのだ。

 それを受け取った当一は、リーシアに向けて、竹刀をかまえた。

「形勢逆転だな」

 当一は、リーシアに向けてそう言った。当一とシェールに挟まれる形になったリーシアは、交互にシェールと当一を見た。

 リーシアは顔に貼り付けていた不敵な笑みを消していた。

「……悪いんだけどやっぱり当一は下がってくれる?」

 シェールが不意にそう言った。リーシアを二人で挟んだ状態で、二人は会話を続ける。

「まだ俺が足手まといだっていうのか?」

「そんな事を言うつもりはないわ。だけど、リーシアは私の敵だから」

 シェールは一人で戦いたいのだ。元は親友であり、今は敵として自分の前に立ちふさがる、深い確執を持つ相手を、自分の手で倒したいのである。

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