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シェールの執念

「だあああああああ!」

 シェールは、その掛け声と共にリーシアの召喚した狼を切り捨てた。

 これで、たおしたモンスターは三十を越える数になる。返り血を浴びたシェールは、疲れで顔を青ざめさせながらも、強い意志を見せる表情を崩さなかった。

「次は……どうすればいいの……」

 肩で息をしながら、シェールは鋭い視線をリーシアに向けながら絶え絶えで言う。

 それを見たリーシアの目には、どんどん恨みつらみを宿した暗い眼差しが浮かんでいった。

「シェール……いつまで足掻くつもり?」

 聞こえているかどうかも分からないシェールに聞く。返事は、すぐに返ってきた。リーシアにとっては最悪の返事だ。

「この命尽き果てるまで」

 リーシアはそれを聞いて、奥歯を噛んだ。

 このような苦境の中でも、シェールは自分の中にある輝きを絶やさない。陳腐な言葉であるからこそ、それが昔から語り継がれているおとぎ話の伝説の騎士のような高潔な精神を持つ魂の光を表す。

 シュヴァリエを掲げるシェールにぴったりの言葉であると思える。それがリーシアには悔しくてならない。シェールが一言でも弱音を吐けば、リーシアは救われる。シェールのシュヴァリエの輝きを持つ精神を、ほんの少しでもいいから曲げてやりたい。そう思って、リーシアは何度もモンスターと戦わせているのだ。

 だが、いくら戦ってもシェールは折れない。決して折れない心の芯を持っているのだ。

「やめろよ……」

 当一の口から言葉がこぼれた。

「もう止めてやれよ! もう分かっただろう! 何があろうと、シェールには勝てないんだ! もう諦めろ!」

「諦めるですって……」

 リーシアは当一の方を見た。顔には今までで一番深い憎悪が刻まれていた。今のリーシアは、絶望感にさいなまれているのだろう。何をやっても、自分はシェールには勝てない。戦いを挑んでも、自分が汚れるだけで、いまだに高潔な彼女の芯には傷一つ付ける事ができていない。

 だからこそ、心に溜まったネバネバしたヘドロのような復讐心は消えない。

「私の執念深さをなめないで。三十回やっても無理なら四十回続けるだけよ。泥を被っても無理なら、ヘドロでも汚泥でも被ってやるわ。でなければ、今まで体が腐るまでドロの中に浸り続けた意味がないのよ!」

 そう言い、次の狼を召喚した。それをシェールにけしかける。

「分からず屋が!」

 当一が叫ぶ。だがそんなものには何の意味も無かった。

 シェールはその狼と戦闘を開始した。それを見た当一は、シェールの痛々しい姿を見せつけられるのが我慢ならなかった。いてもたってもいられなくなった。

 当一は球の中で暴れ出した。

 球の中から、殴って球を割ろうとする。それを横目で見ていたリーシアは、すぐにシェールと狼の戦いに目を戻した。

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