謎の戦士が家に
「いきなりで状況が飲み込めないのは分かります。一つずつ説明をしましょう」
口をぱくぱくさせながら、言葉をしゃべれずにいる当一に向って、彼女は話し始めた。
「まず、私はこの世界の人間ではありません……」
彼女はある事情により、異世界からこの世界にやってきたのだという。その事情というのは、どうやら、当一の力なしでは解決のできない事だという事らしい。彼女がそこまで話したところで、当一は彼女の話を止めた。
「待てよ! そっちの事情で、何で俺が動かなきゃならないんだ?」
「それはこれからお話いたします」
そして彼女は説明を続ける。当一は気付いていなかったが、彼女の額に怒りを表す青筋を浮かんでいた。
その世界では、今、王が居ない状態なのだという。国王が死去し、次の王を決めるためにあるしきたりを行わなければならないというのだ。
「そのしきたりっていうのは何なんだ?」
「はい。これから説明いたします」
当一の質問に、彼女は表面上は丁寧に答えた。だが、当一の気付かないところで、彼女の額に青筋が増えていく。
それは王の座を巡った争奪戦なのだという。王の候補者は、異世界の人間とタッグを組んで、他の候補者と戦わなければならない。
戦いの方法は異世界の人間を倒せば勝ちというものだ。この世界の人間は、この戦いにおいてはジェズル(権杖)と呼ばれ、折られれば権力を失うという意味を持っているのだという。
「ちょっと待て! じゃあ俺は殺されちまうんじゃないか!」
「話は最後まで聞いてください。ジェズルの皆様の安全は確保されています」
その返事をする時、彼女は額の青筋を増やしただけではなく顔を引きつらせた。それでも彼女は表向きには丁寧に話を続ける。
セイフティリングというものがあり、それはそれを身に着けている人間の事を守るのだという。だが、セイフティリングの耐久力にも限界があり、攻撃を守り続ければ壊れてしまう。
「そのセイフティリングが壊れた瞬間が、ジェズルの破壊の瞬間とみなされます。ですから、ジェズルの皆様は命を落とすという事はまずありません」
「だが、俺にその戦いに参加する理由が……」
当一がそう言うと、彼女の額の青筋が音を立てて切れた。
「ああああああ! ごちゃごちゃうるさいわね! とにかくついてきなさい。だらだら話すよりも、実際に見たほうが早いわよ!」
彼女が態度を豹変させた。そして、当一は自分の足が床の中に沈んでいくのを見て、さらに驚く事になった。
いつのまにか、足元には光で書かれた魔方陣が出来上がっていたのだ。まるで泥の中に沈んでいくように、当一の体は魔方陣の中に飲み込まれていき、姿を消していった。




