シェールから言われて
「ヴィッツの師事をうけているそうね……」
シェールは私が師匠を殺したヴィッツの教えを受けているのを知っているようだ。凍った瞳の原因はそれだったのだ。
シェールは、私が自分の師を殺した仇を近くに置いている事が我慢ならないのだろう。その時、私は頭にその事を否定する言葉が浮かんだ。敵討ちのために近くに置いているのだと言おうと思った。だが、少しずつ頭が冷静になっていき、どんどん大きくなっていく冷静な部分がそれを阻んだ。
シェールにもし本当の事を言ったとして、シェールがそれを納得するだろうか? 彼女は私の行動を卑怯な行動だと思うかもしれない。すでにドロを被っている身である。これ以上汚れて何の問題があるのだろうか? いままで敵討ちだけを考えてきたのだ。親にも、使用人にも、誰にもこの事は言ってはいない。シェールにだけ教える必要があるのだろうか?
冷たくなっていった私の心は冷静にそう考え、今にもシェールに弁明をしたいという気持ちをどんどん押さえていった。
「師匠がいなくなったのだから、代理はどうしても必要でしょう?」
私のその言葉に、シェールは唇を噛んだ。
だが、それ以上私の事を責め立てる気は無いようで、ここに来た用件の事を話し出した。
「私はゼルと決闘をする。あなたにはそれを見ていて欲しいわ」
シェールは師匠達を殺した、もう一人の片割れである、ゼルと決闘をしようというのだ。聞けば、ゼルはシェールの家にシェールの指導者として招き入れられているという。私と同じような状況にあるという事だ。
シェールは私とは違い、ゼルの指南を突っぱね続けているという。
「そして、『あなたが私に勝ったら、あなたの指南を受けてあげるわ』って言って、決闘をするって言う話に持ち込んでいったのよ」
いくら、シェールは前の師の教えを受けているといっても、所詮はまだ訓練生の段階である。冒険者をして名を上げた実績のあるゼルに勝てるとは思えなかった。
だけど、彼女はこう言った。
「勝てない敵だろうと関係ない。私は私のシュヴァリエにしか従わないの」
私はそう言った彼女から目が離せなかった。
まぶしく見える彼女から、目が離せなかったのだ。




