失意のうちに……
それから私はあまり外に出なくなった。敬愛していた師匠があんな不当な殺され方をして、それで自分は何もできなかった。シェールとも会わなくなった。二人が会うのは、いままでは合同練習をする時が多かった。二人の師匠が顔なじみだという事から合同練習を繰り返していたのだ。
それがなくなってから会う機会が一気に減ってしまったのである。
シェールはどうしているだろうか? 自分と同じようにふさぎこんだままなのだろうか? 自分と同じ境遇になった彼女の事を心配する気持ちが生まれるものの、体に力が入らず指一本動かすのも面倒であった。
自分がどんどん泥沼の中に沈んでいくような感覚である。深く深く沈みこんでしまうほど、この泥沼から抜け出す事は不可能であるのは分かっている。だが、気力が湧かず力が出ない。
それが何日もの間続き、これではいけないと思った親が、暇を見て私を外に連れ出すようになった。
そして、また私の運命がねじれる瞬間がやってくる。
そこは、とある貴族の荘園の一つ。観光を生業にしているところのため、人が多いものの、まったく閉塞感を感じない気持ちのいい場所だ。
遠くでは牛を飼っている牧場が見え、ここから見える繁華街にはその牧場の牛から搾ったミルクが売られている。
今私が居るのは、中心に噴水の設置されている、整地をされた公園である。だが、公園の真ん中の方に行く気は起きず、隅の目立たないところに置いてあるベンチを見つけて、そこで空を見上げていた。
そこにあの男がやってきた。
「お嬢さん。隣をよろしいかな?」
憎たらしく爽やかな笑顔を向けてやってきたその男は、師匠を殺した男の片割れのヴィッツであった。
私は突然の事に驚いて声をあげられなかった。その間にも、私の了承を得ずにベンチの隣に座ったヴィッツは続けてくる。




