魔法屋の正体
人がほとんど通らない大通りから外れた道を選んで通っているため、道は暗いし幅も狭い。魔法の技術で作られた素材で作られた建物の壁は、日の当たらず、掃除もろくにされない路地裏の壁であるにもかかわらず、変わらずの光沢を持ったままである。
だが、人というのはどの世界でも変わらないもの。壁は綺麗でも、石畳を敷かれている地面には、乾いてカラカラになった果物の皮や、空のビンなどが散乱している。
当一の世界と同じように、汚い裏路地の道そのものの姿だ。
シェールは敵のジェズルの反応を追っていった。参加者には、他の参加者のジェスルの場所が、大体分かるようになっている。
「また消えた……」
シェールにはこの町のどこかに敵のジェズルがいる事が分かっている。だが、そのジェズルの反応が付いたり消えたり、明滅を繰り返しているため、詳しい位置までは絞り込めないでいたのだ。
「魔法を使ってかく乱でもしているのかな……」
魔法使いタイプの参加者であれば、それくらいの事はできる。参加者は、色々な武術を学んでいる者が参加しているのだ。シェールは剣術を学んでいるし、弓術を使うほかの参加者も知っている。今回の相手は魔術を使うのだろう。
だが、隠しているようで完全に隠れていない。とうてい、強い力を持った者の隠し方であるとは思えない。
今回の戦いは、先のディーリアとの戦いに似たような戦いになるだろうと思われる。自分が未熟な相手を狩る、一方的な戦いだ。
それでは、あのジェズルがまた何かを言い出すかもしれない。
当一はこの戦いがどんなものかを分かっていない。このような事はそこらじゅうで行われているのだ。当一がぐだぐだ言い出すのに、いちいちかまってもいられないのである。
歩いていたシェールは背後に気配を感じ、足を止めた。
シェールは後ろを振り返り、剣を、自分の後ろを歩く人影に向けてかまえた。
「まったく……隙がないわね。そういう所は相変わらずじゃない」
その人影であるリーシアは、フードを外して不敵な笑みをシェールに向けた。
「なんで、あんたがここにいるのよ?」
シェールがリーシアに質問をするのを、リーシアはくすくす笑って聞いた。不敵な笑い方である。
シェールは考える。
あのジェズルの反応は、リーシアのジェスルのものだというのは間違いが無いだろう。他のジェズルの反応は無い。
だが、なぜここにリーシアがいるのだろうか? ジェズルを一人にしてしまうと、危険であるため、基本的に候補者はジェズルと行動を共にする。シェールはリーシアがジェズルと共にいるものだと考えていたのだ。
「宿屋に用があってね。その帰りよ」
「宿屋……あんたっ!」
シェールが顔を強張らせて叫ぶのを見て、面白い物を見たかのように顔をにやつかせたリーシアが、すぐ隣の建物の屋根を見上げた。
「あいつ……ドアを開けるなと言ったのに……」
その建物の屋根には、リーシアの使い魔である大鷲が、当一の事をくわえているところがあった。当一は、薬か魔法で眠らされているのか、ぐったりとして動かない状態だ。
「町の西側に行くと見える、あの高台がいいわね。そこで、明日の正午あたりに待ち合わせをしましょう?」
これは決闘の申し込みである。シェールはそれを聞いて頷いた。
「セイフティリングは破壊しないの?」
そして、リーシアに質問をする。リーシアはまた不敵にくすくすと笑った。
「私がこんな事をする理由は、あなただって分かっているんじゃないの?」
リーシアは魔法で背中に羽を作って空へと飛んでいった。そして、当一の事を抱えて飛んでいく。リーシアの使い魔も、それを追って飛んでいく。




