しごかれて……
武道館の一角に、一美と当一の訓練のスペースが作られている。
そこで、壁にもたれかかって休んでいる当一の姿があった。
「ちょっとは手加減しろっての……」
放課後に一美のしごきを受けた当一は、見事に腕に痣を作っていた。
一美は見た目どおりの剣道少女で、しごきというのも剣道の練習である。彼女は遠慮なく打ち込んでくるため、いつもしごきが終わる頃には腕が痛みで上がらなくなってしまう。
今日の地獄の特訓を耐え切った当一は、傷む腕で自転車に乗りながら家に向っていた。
当一にとって、これはよくある事である。帰ったら、冷水で痣を冷やしておかないと後で酷くなる。もしそれを怠ると、腕が腫れあがってしまい、明日それを見た一美をまた心配させてしまうのだ。
家に帰ると、当一の母、祥子から声をかけられた。
「当一。お客様を待たせているからすぐに部屋にあがりなさい」
誰かと約束をしていた覚えのない当一。何があったのか分からないものの、すぐに二階にある自分の部屋に向かう。
ドアを開けると、そのお客は、礼儀正しく一礼をして当一の事を出迎えた。
「お邪魔しています」
自分の部屋に居たのは、朝のごたごたで自分の前に姿を現した、戦士の姿だった。
ここにいるのがさも当然という様子で待っていたのを見て、当一は言葉を失った。