オオルリの散歩
オオルリは、近所の地理を把握しておくためにこの町を歩いておくことにした。
半分は、気分転換である。変な格好をさせられて、恥ずかしいことを言わされて、未だに胸がムカムカしていた。
「この世界での住居も探さないといけないっすし……」
この王を決める戦いには、戦う以外にも問題がある。
この世界での住居を探さないといけないのだ。それまでの恵まれていた環境を捨て、見ず知らずの世界に放り出される。
その世界で、どのように生活するか? 衣食住の確保をする事も大事な要素だ。
昔から、どの世界でもどの時代でもハラペコの軍隊が勝った例は無い。
普段は健全な生活をして、体調を整えておく事も必要なのである。
「どうすればいいっすかね……」
この戦いでは、それが一番の難関であると、戦う前からオオルリも聞いていたのだ。
「こんな所で合うとは。奇遇ですね」
思案にふけっているオオルリに、声をかけたのは友人のラタ・ヴェンターであった。黒く長い髪をした、黒瞳の少女である。
二人は、よく似た風貌をしている。違うところを言うのならば、ラタはいつも眠いのか睨んでいるのか分からない半眼をしているのに対し、オオルリは、大きく丸い目を、しっかり開いているところだろう。
ラタも、王を決める戦いの参加者である。今のオオルリと彼女は敵同士の間柄だ。
だが、こちらの世界では戦いをしてはならないというルールがあるため、二人は争いをせず、今は静かに話し合う。
「ラタはサナミという奴を知っているすか?」
「ええ、子供の頃からの付き合いですから」
丁度よく、サナミの事を知っている者に会えたオオルリは、サナミの事を詳しく聞く。
「あいつはどんな力を持ってるんすか?」
「サナミは忍術を使えるんですよ」
忍術と聞いて、オオルリは合点がいった。
忍術というのは、直接剣を交えて戦うには向かない能力である。
忍者の得意は、偵察と暗殺。逃げ隠れや、こっそり近づいて敵を倒すような方法を得意としているが、真正面から、敵とやり合うには向かないのだ。
「だから『自分が王になる事は考えてない』と言っていたんすね」
「彼女に会いましたか……」
ラタは、小さくため息を吐いた。
「どうしたんすか?」
「悪いことは言いませんから、あいつは会った瞬間に殴り倒したほうがいいです」
「物騒な言いようすね」
「王の座を狙いあって、ドンパチをする時点で、物騒な話だと、私は思いますが……」
ラタが言う。それを言うと身も蓋も無い話だが、力で相手を倒して言う事を聞かせるような事を極力するべきではない。
話し合いで仲間を手に入れられるなら、その方がいい。少なくともオオルリはそう考えている。
「あいつはバカです。そのくせ、自分は頭がいいとか考えています。あいつが、何かを言ってきても、相手にせずにそのまま倒せばいいです」
「随分な言いようすね……」
ラタが、人の事を、ここまで悪し様に言うような事は、オオルリには覚えがなかった。




