こんな事だとは……
「いらっしゃいませご主人様……」
「照れとる場合やない! もっと、はっきりした声で言うんや! 可愛い声で! 媚びてはいかんなんて、考えるな! 本気で媚びながら、狙ってあざとく!」
サナミの出してきた条件というのは、まず、メイド服に着替えて『お帰りなさいませ、ご主人様』とか、『心をこめて、ご奉仕させていただきます』または『ふつつか者ですが、よろしくお願いします』などといった言葉を言う事であった。
「これで、本当に仲間になるんすか……?」
オオルリは怒りで歯ぎしりをしながら、サナミを見上げて言う。
「こら! 余計な事は言うなんや! また、最初からいくで!」
サナミはオオルリに向けて言う。
「これに、いったい何の関係が……」
悔しさから歯を食いしばったオオルリは、じっ……とガマンをしながらサナミの言う事を聞く。
「オオルリ……さっきから結構時間が経っているが、大丈夫か?」
一美が言う。
「そうっすね。そろそろ戻らないと、一美が学校に遅れるっす……」
オオルリはサナミの方を見る。
「なんや、時間がないんかい? こっちにも準備する必要があるし、今はこれくらいでいいやろう」
オオルリは、その言葉を聞いてほっ……と、ため息を吐いた。
「あそこでああ言ってもらえたのは助かったす……」
魔法陣を使って、元の世界に戻ってきたオオルリと一美。
「どうも、ああいうのは苦手で……」
「それはよく分かるぞ。あんな恥ずかしい事するくらいなら死んだほうがマシだ」
「そうすね……もしも、百年の恋の相手から言われたって、御免すよ」
オオルリが言った。一美はそれを聞くと、顔を赤くした。
「別に、百年の恋の相手から言われるのなら、いいかもしれないが……」
どうも、こう言っているのを聞くと、一美には心当たりの男でもいるようである。
それを、オオルリは感じているのだが、人を茶化すような事は好きではないので、その話には触れない事にした。
オオルリは、今日の夕方にも、またレイグネンに向かう事を一美に伝えると、外にまで歩いていく。




