それを見ていた者
「ちっ……あいつはいちどやると決めたらとことんやるのよね……」
彼女の名前はリーシアといい、今朝、当一の事を襲った魔導師である。
彼女の国の魔法の形態は単純で、エレメント(四属性)に基づいた魔法を、リーシアは学んでいる。
リーシアは風の魔法を今は使っていた。その風の力を使って相手の位置を探り、今は二人の会話を盗み聞きしていた。
今リーシアがいるのは民家の一室であるが、床に魔法陣が敷いてあり、これで自分の魔法の力の補助をしているのだ。
隙を見て、シェールのジェズルである当一に襲撃をしかけようとして、チャンスを窺っていた。だが、シェールはリーシアの襲撃を恐れて寝ずの番をしているのである。隙など見つけられようもなかった。
リーシアは、人を疑いすぎて鋭くなった目を閉じ、どうしても幼さの消えない丸みのある顎に手を当てて考え出した。
魔術のために背中まで伸ばした紫色の髪は後ろで束ねられている。もみあげから伸ばした髪を指で弄びながら、少しの間黙考をする。
「今日はもう寝るか……」
これはただ諦めたわけではない。
たしかに、今の当一に付きっきりでばんをするシェールには付け入る隙がない。だが、それだって長く続くわけではない。集中力がいつまで続くか分からないし、疲れだってたまってくるはずだ。
そうやって、弱ったところに襲撃をしかけるという方針に切り替えただけだ。
彼女は、隠れて相手に襲い掛かる事が得意である。そのためなら水や泥を被る事だっていといはしない。
「正々堂々なんて、守っていても無駄なだけよ。シュヴァリエなんか、潰れてしまえばいいわ」
魔法陣を片付け、長い髪にくしを通して髪を頭の上で束ねながら、リーシアは聞こえるはずがないのを分かった上で、シェールに向けて呟いた。




