街の景色を、二人で見て
「だろう」
そこは当一が気に入っている場所である。
林道から、車が落ちないように取り付けられているガードレールの向こう側には、この町自慢の夜の景色が広がっていた。
あの街の中に飛び込んでいけば、無粋な喧騒と派手な装飾でうんざりさせられてしまうだろうが、遠くから見ると、宝石をちりばめられているように見えるのだ。
当一は一美にこの場所を教えたことがある。一美はこの景色を見た時喜んでくれた。だから、シェールにもこの景色を見て喜んで欲しいと思ったのだ。だが、シェールはこの景色を見てふてくされたようにそっぽを向いた。
「なんだよ、この景色が気に入らないのかよ」
「別に、この景色が気に入らないわけじゃないわ」
そして、シェールは小さな声で続けた。
「私が見せた景色を綺麗って言ってくれなかったじゃない……」
「ん……? どういう事だ?」
「私がレイグネンで見せた景色は、私のお気に入りの場所だったのよ。結構自信があったのに、あんたは一言も綺麗なんて言ってくれなかったじゃない。それなのに、私はこの景色を綺麗なんて言っちゃって……」
シェールは顔を伏せて言った。恥ずかしがっている顔を見られるのが嫌なのだろう。
「どうせ、覚えていないんでしょうけど……」
最後にシェールはそう付け加えた。
当一が目を覚ました時に、目の前に広がっていた景色である。視界いっぱいに草原が広がり、草原に浮かぶようにして存在する壁に囲まれた町は、太陽の光を浴びて、輝いていた。
「あれは……いい景色だった」
当一は思い出してそう言った。
「いいわよ! 今更フォローを入れるように言わなくても」
「そんなつもりはない。あの景色はどっかのカメラマンが写真に収めるような綺麗な景色だった。これは嘘一つ無い俺の本心だ」
「いいって言っているの!」
そう最後に言ったシェールは、きた道を戻り始めた。
「もうここの用は済んだでしょう! 帰るわよ!」
言い捨てるようにしてそう言ったシェールは先に歩いていってしまう。
「怒らせたかな……?」
当一は、シェールに聞こえないように呟いて追っていった。
とうのシェールは、当一に見えないところで口元を綻ばせた。あの景色をほめてもらえて嬉しかった。
だが、それを言葉にして当一に伝えるのははばかられた。




