冷え切った体で
「完全に湯冷めした……」
就寝をしようとして布団に入ったものの、当一は布団の中で震えながら、灯りを消した部屋で寝ていた。
「あんたが悪いんでしょう。あんな汚いものを見せるから…」
「その話はもういいや」
シェールは当一が布団に入って眠る横で、剣を抱えたまま腰を下ろして壁にもたれかかった状態で居た。
あれからシェールは結局風呂には入らず、ずっと当一の傍にいた。
当一の警護のために傍にいると言ったとおり、片時も離れず、眼光も未だに衰えを見せていなかった。大統領の警護をするSPであってもここまでの事はしないであろう。それを考えると大げさすぎるように感じた。
「お前は寝ないのか?」
「寝ないわよ! 寝たら何かする気じゃないわよね?」
「お前はさっきといい……俺の事を何だと思っているんだ……」
「露出狂の変態」
「……」
それはいくらなんでも、あまりにもな返答である。布団にくるまりながらも、当一は奥歯を噛んだ。
「そっちがそう言うなら」
当一はそう言って布団から出て、秋用のコートを着込んだ。
「どこに行く気?」
「ついてからのお楽しみさ」
「わたしもついていくような言い方じゃない」
「俺の警護のためにつかず離れずなんだろう? 外出中もしっかりと警護をよろしく」
「何様のつもりよ」
そう悪態をつきながらも、シェールは当一が外に出るのについていった。
当一の足は、人の多い駅の方でなく町の外れに向かって行った。車の通る量も少なく、両脇に針葉樹の並ぶ林道を当一達は歩いていた。
「ねえ。本当にどこまで行くつもり?」
「ついてからのお楽しみ」
「いいかげん言いなさいよ」
「おあずけもできないのか? 躾のされていない子だねえ」
「あんたなんかに犬扱いされるいわれはないわよ」
さっきから質問を続けてくるシェールを、当一はのらりくらりとかわし、目的の場所に向かった。終始、不満そうな顔をしているシェールは、その場所に着くと、
「綺麗ね……」
と言って、それから言葉を失った。




