信念とは何か?
あれから、シェールと女の子のいがみ合いは続いた。
女の口喧嘩などというものは、醜いもの。
相手への罵り言葉はすぐに尽き、結局は、「バカ」だの「アホ」だのと言い合う泥合戦になっていった。
二人とも、言葉が尽き、黙ってにらみ合いを始めたところ、すかさず当一と、リーシアが二人を止めに入った。
「そろそろ行くぞ……」
そう言い、やや強引にシェールを正門にまで向かわせる当一。
「喫茶店で、コーヒーでも飲みましょう……」
そう言って、女の子の肩を掴むリーシアは、女の子を喫茶店に連れて行く。
そうして、一時停戦という事になったのだ。
「あんた達が、止めに入らなきゃ、今頃、あいつは血祭りにあげていたのに」
「血祭りにすんな!」
あの時の怒りが、未だに覚めやらぬ、といった感じのシェールは、当一とリーシアに突っかかっていた。
ここは、当一の家の居間。テーブルの両脇に、ソファーが並び、そのソファーに三人が座っている状態だ。
「あなた……信念は見つかったの?」
居間のソファーに座っている三人。シェールが一つのソファーで座っているのに対し、向かいのソファーに並んで座っている当一とリーシア。
「今、その話は関係あるの?」
そう言いつつも、ソファーに寝転んだシェールは考えるようにして頭に手を当てた。
「シュヴァリエ……」
静まり返った室内で、シェールの声が聞こえてくる。
「私の信念っていったら、シュヴァリエしか無いと思うのよね」
そう言ったシェールだが、それじゃダメなの……とばかりに次を続けた。
「でも、シュヴァリエ……騎士道ってのは、君主に仕える者としての心構えの事なのよ。誰かに仕えて、初めて騎士を名乗れるのよ」
そこまで細かいことまで知らない当一だが、ふと思い出したようにして言う。
「騎士っていえば、騎士王のおとぎ話があったな……」
「騎士……王……?」
シェールにとっては聞きなれない事だ。騎士が王になるというのは、考えもしなかった。
「その話……興味あるわね……」
そう言い、シェールはソファーから立ち上がり、部屋から出て行った。
騎士たるもの、君主に仕え、弱きを助け強きをくじく。優しく礼節を重んじ……といった典型文句の通りに動いているシェールは、騎士というものに誇りを持っている。
「あの子に、その話は、どう映るかしら?」
リーシアが言うと、当一も、頭を抱えた。
「何か、答えを見つけてこれればいいがな……」
今度、レイグネンに行った時は、シェールが答えを出せたかどうか? が重要になってくるだろう。




