帰ってきて
当一の部屋の床に魔方陣が現れ、その魔方陣から、ステージの奈落から出てくるようにして、シェールと当一が姿を現した。
「今日はこれで終わりよ。また明日も頼むわ」
シェールは、そう言い当一の部屋から出て行こうとした。そこに当一が声をかける。
「お前はこれからどうするんだ?」
「そうね……朝襲われたように、いつ他の奴が襲ってくるか分からないわ。この家の近くで、あんたの警護をしやすい場所を見つけてそこで寝起きするつもりよ」
「まだどこに泊まるのか決まってないのか? それは困るんじゃ?」
「まあ、これくらいの事は自分で何とかするわ。この戦いに参加する時に、その覚悟はしっかりつけてきているから」
そこで部屋のドアが開かれた。
「そういう事なら、うちに泊まっていってもいいわよ」
それは、布団を抱えた当一の母親である。彼女の名前は祥子といい、前々から細かい事は気にしない性格であるというのは、当一も分かっている事であった。
「あの……祥子お母様……あなたは今の状況をどのようなものだとお考えですか……」
丁寧語で質問をする当一に、祥子は少し「うーん……」と言って思案をする顔を作った後で答える。
「息子の当一が、家出少女をたぶらかして家に連れ込んだって状況かしら?」
「俺は泣けばいいのか笑えばいいのかわからないんだが……」
不満とも何ともつかない言葉を呟く当一などは気にせずに、祥子は布団を部屋に敷いた。
「うちでは、六時に夕食にする事になっているから、シェールちゃんは明日からはその時間までには家に帰ってきてね」
シェールは、唐突すぎる話の進み方についていけないようであった。
祥子は、それでも気にせずに用がこれで終わったとばかりに部屋から出て行った。
後に残されたのは、当一と呆然としたシェールである。
「何か聞きたいことはあるか?」
呆然としたシェールに、当一は声をかける。
「あの人は一体何を考えているの……?」
「それは俺にも分からない」
祥子は、昔から細かい事は気にしない性格だった。それについて、当一はいつも驚いたり呆れたりを繰り返している。
「これは細かい事なの? 鎧姿で剣を持った人間が、家に上がりこんでいるのよ。最初にこの家を尋ねて、そのまま中に入れてもらえたのだって不思議だったのに……」
「そのかっこうが変だっていうのは自覚しているんだ……」
今回も、色々と問題のありそうな事が目白押しの状態でも、何も気にせずに受け入れているのだ。
「母さんの事は、考えるだけ無駄だと思うぞ」
今の時間は六時である。祥子が、夕食にすると言った時間だ。台所から、祥子の「ごはんを食べにいらっしゃーい」という声が聞こえてきた。
「あつかましいんじゃ……」
「気にしたら負けだ」
当一は、いまだに動揺しているシェールを台所にまで連れて行った。




