bad girl
しつこい。
かれこれ10年あたしはあいつからの視線に耐えてきた。
あいつ、あたしの幼馴染みで10年間熱の篭った目で見てきた糞ヤロウだ。
幼馴染みだがあたしはあいつの名前を覚えていない。嫌いだからだ。だけど、名前がないとあたしが不便なため、不本意だけど、幼馴染みとこれからは呼ぼう。
幼馴染みは、顔が整っていて、頭も良いから女子にモテていた。しかも、性格が良く明るいから友達にも恵まれていた。なのにずっとあたしから離れないため、あたしは彼氏が出来ない、女子からは嫌われ妬まれ、ハッキリ言ってウザイ、しつこい、キモい。あたしの中ではただの邪魔なやつだった。
小さい頃からあたしの側にずっといて、近所の人からは、どっちが女の子なのか分からないなどふざけた事をぼやかれ、両親からはあいつを見習えなど意味解らん事をほざきやがった。
幼馴染み死ねっ!!と、何度心の中で思っただろうか。昔はしょうがないと諦めていたが、幼馴染みがあたしに気がある事が分かり、今まで我慢してきた思いが爆発しそうになった。てか、爆発した。殺意しか沸かない。
あたしが好き?はっ、ふざけんな。誰がお前何か好きになるか。あたしがお前のせいでどれだけ嫌われイジメられたか知らないだろ?どれだけ惨めな人生だったか知らないだろ?
けど、もう良いんだ。幼馴染みのあの視線から逃れられるのなら、今までの事は水に流そう。本当にしつこいし、ねちっこい。それを、行動に移してくれたらあたしだって拒否なりなんなりしたって言うのに、幼馴染みは何もしないで、ずっと側にいるだけ。あたしは、幼馴染みの顔面を見ただけでも吐きそうになるのに、5年、あたしはさすがに参っていた。本気で殺してやろうかと考えるほどに。
そんなある日、あたしの高校に転校生がやって来た。
名前は・・・何だっけ?まあ、転校生で良いか。
転校生は、幼馴染みと同じくらいに顔が整っていた。あたしも思う。すっごく可愛い。
転校生は幼馴染みに気があるようで、よく幼馴染みの側にいるあたしを涙目で睨んでいた。余計クラスの皆に嫌われたと思う。本気で幼馴染み死ね。
だが、彼女はあたしの救世主だった。クラスの皆が転校生と幼馴染みをくっ付けようと動き出したのだ。
これは協力しなければ、あたしは早速行動に移す事にした。
「ねえ、折角の休日なんだしさ、あたしの側に居ないで、たまにはクラスの子と遊んできなよ」
ちなみに此所はあたしの部屋だ。朝も昼も夜も、ずっと金魚の糞みたくくっ付いている。死ね。折角観てる、あたしの好きなドラマも今はまったく面白くない。
「えー、何で?俺、ちぃの側が良い」
ぎゅっと、あたしの体に抱きつく。
あーあ、この服お気にいりだったのに、最悪。マジで死ね。
「・・・・、ほら、転校生のあの子とかさ。昨日誘われてたじゃん」
それを幼馴染みは断って、あたしは何時もの様に睨まれたんだ。あたしの前から消え失せれば良いと思う、こいつ。
「転校生?いたっけ?」
「へっ?」
何だ、こいつ。転校生の子、バリバリ存在感あるだろーが。めっちゃ、話しかけられてただろーが。
「ほら、いっつもあんたに話しかけてる可愛い子」
「んー?んー、あ。あの子か、転校生だったんだ」
「気付かなかったの?」
あり得ないだろ。頭イッてんじゃねーの。まあ、しょうがないか。こいつもともと頭可笑しいし。
ちょうど良いや。転校生に興味が湧くかもしれないし。
「すっごく可愛いんだよ、性格良いし」
「・・・・・そう?」
「そうだよ、」
テレビの中では、今人気の俳優が映っている。障害を乗り越えついに告げられなかった愛の告白をしようとしている。かっこいいなー。
だから気付かなかった。幼馴染みが、あたしを見ていた視線を。
「・・・・・ちぃ」
「何、今良い所なんだけど」
テレビの中で2人は抱きしめあっている。
あー、良いなー、こんな恋したい。
「好き、付き合って」
「ふーん、あっそ・・・・・って、え?」
「付き合って」
抱きしめていた腕が強くなる。止めろ、お前の汚い菌が移るだろ。
「・・・・何で付き合わないといけないの?」
「好きだから」
キモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモいキモい、あ、鳥肌たった。
「・・・・・・腕どけて、気持ち悪い」
「何で?」
・・・殺してやろうか。
あたしは腕を払いのけて、幼馴染みを見据えた。
「・・・何でって、気持ち悪いんだよっ!!あんたの顔見てたら、吐きそうになるのっ!!!何なのよっ、いっつもいっつもあたしの側に糞みたいにくっ付いて!!ウザイっ、さっさと転校生と付き合えば良いのよっ!!!」
我慢していた思いが溢れだす。
少しして、思った。あれ、あたし今なんて言ったっけ?
「・・・・へぇー、ちぃそんな風に思ってたんだー」
幼馴染みの声がさっきより低い気がする。
暑くないはずなのに、背中に汗が流れる。
「じゃあ、しょうがないか・・・・・今まで優しくしてたのになぁ」
「え?・・・・・・っ!?」
髪を掴まれた。痛い、ブチブチって髪が抜ける音がする。
「告白すっごく緊張したんだよー?なのにちぃにそんな事言われてさー俺ショックー」
「い、たいっ・・・痛いっ!!」
「痛い?俺の方が痛いよ・・・大好きなのに、ちぃの事」
あたしを離す気配はない。
「・・・・・ちぃは俺と離れたい?」
そうに決まってるでしょ、糞ヤロウ。そう言いたいけど、あまりの痛さに声がでず、その代わりに必死に首を縦に振る。
「じゃあさ、俺のお願い聞いてくれたら離れてあげる・・・・・でも、聞いてくれないなら、俺のペットね」
「・・・・・・・」
何言ってんの?こいつ。
あたしは、目を点にした。
「ちぃ、どうする?お願い聞いてくれる?」
あたしは考えた。もし難しい事を言ってきたら?あたしはそれに応えられるの?
どうしよう。こいつと離れる事は嬉しい。でも・・・・・・。
「簡単な事だよ、・・・・覚えてたらの話しだけどね」
「・・・やる、・・・お願いって何?」
こいつと離れられるなら。あたしが聞くと、幼馴染みは気持ち悪い笑顔になった。
「俺の名前、言ってみてよ」
「えっ・・・・?」
こいつの名前って何だっけ?さ、とか、し、が入ってた気がする。
・・・・・汗が流れる。分かんない。
「・・・・・・分からないんだ」
「・・・・・・・・」
あたしは、恐る恐る幼馴染みを見た。
「ひっ、」
行きなり首に何かつけられた。
「ま、知ってたけどねー。ちぃが俺の名前知らない事」
首を触ってみる。皮みたいなものが首にある。・・・・首輪?
「今日からちぃ、俺のペットな」
目の前が真っ暗になった。
「嫌、だ」
「何で?約束でしょ?」
「嫌、」
「学校止めよっか。俺のペットなんだから学校必要ないよね?」
「ごめんなさっ、・・・っ」
顎を捕まえられ、上を向けさせられる。
いつもとは違う笑顔。
「まずは俺の事ご主人様って呼んでみてよ」
ちぃちゃん性格悪そうに見えますか?
何か、幼馴染みくんドンマイって感じですねww←
人物紹介
ちぃ
性格最悪。
幼馴染み
小学1年生の頃からちぃちゃんに片想いしてた。