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そして魔王城へ

サクっと(以下略)。お約(以下略)。

旅を始めて半年が過ぎた頃。思っても見ない展開が訪れた。

旅の途中ふと見つけた地図にも載っていない小さな村で。

腰の曲がった老婆は柔和な笑みを浮かべて、快く家に招き入れてくれた。

長く野宿が続いていたし、久々に屋根のあるところで寝られる!と喜んでいたのもつかの間。

なんと老婆は魔王の手先だった!なにそのお約束な展開?!

老婆はあっという間に露出凶じみた妖艶なお姉さんに姿を変えて、なんということか親友を抱きかかえて空高く飛び立った。

魔王様には気高く美しい癒しの魔力を備えた聖女という生贄が必要だ。そんな捨て台詞を残して。

確かに親友は長く続く旅の間にその能力を遺憾なく発揮し、魔物に襲われた人たちを平等に癒して、いつの間にか「聖女」として崇められるようになっていたけど!

って、だからなんでそんなお約束な展開?!

でも、結局はそれが功を奏して魔王の居城を発見できた。

チートなわたしの能力を甘くみてはいけない。なんと、わたしは親友の居場所はたとえどんなに遠く離れていようと察知出来るのだ!

え?ストーカーっぽい?大事の前ではそんなこと瑣末なことなのだよ。

そんなわけで半狂乱になって突入した魔王の居城。魔法防御を全開にしていたわたしに魔力を込められたトラップなど無きが如し。

物理的攻撃は賢者が全部弾き返してくれてたし、魔王使いのお姉さんはいつの間にか親友を連れ去った女型の魔物(淫魔というらしい)とガチンコ勝負(同族嫌悪とでも言うのだろうか)。

マッチョ騎士さんは角を生やした大きな魔物(ケンタウロスというらしい)と対峙して非常に嬉しそうだった。

第二王子は悲壮感漂う顔をしてわたしと並走していた。それはそうだろう。親友が連れ去られたとき一番傍にいたのは第二王子だったのだから。

賢者は先ほどからわたしと同じく魔力全開の割りに涼しい顔をして「あっけないものですねぇ」と呟いた。

わたしが親友の名を連呼しながら剣を振りかざし並み居る魔物たちをバッタバッタとなぎ倒していくのを見て、だ。




とうとう辿り着いた魔王のいる間には、鳥篭のような檻に閉じ込められた親友が居た。

白い衣装はところどころ破れていて、泣きはらした赤い目が痛々しかった。

その姿を見た瞬間、わたしはまたしてもブチ切れた。

魔王?そんなの存在を認識するまえに瞬殺。

魔物や魔族の血が染み込んだ聖剣(王様からもらった初期装備品)で魔王の(自主規制ピー)をサイコロ状に(自主規制ピー)し、ぐちゃぐちゃに(自主規制ピー)してようやく胸が梳く思いがした。

魔王の城のお宝を漁ってからいつのまにか合流していた義賊さんは目の前に広がる惨状を見て「うわ、マジで引くわ...」と呟いていた。

わたしは義賊さんの呟きを華麗にスルーして、親友が捕らわれている檻へと視線を向けた。

さぁ、今わたしが助けてあげるからね!!

―――と、意気込んでいたけれど、その意気込みは目の前で繰り広げられている光景にあっさりと霧散した。

「ミオウ!!」

「アルトさん...!」

心の底から安堵したように、だけどどこか苦しそうな表情をして親友を抱きしめる第二王子。

そして、第二王子の広い背中に一生懸命両手を回して泣き崩れる親友。


...あれ?あの2人って、実はそういう関係だったんですか?


わたしの心の疑問に何故か賢者が頷いた。


...え、一体何時からですか?!


再びのわたしの心の疑問に、義賊さんが「オレが合流した時にはもうあんな感じだったぞ?」と...

その後のことはよく覚えていない。

義賊さんがお宝漁るついでに魔王の城の様々な仕掛けが解除されていて、魔王が死ぬと同時に崩れ去るはずだった城からゆったりと脱出し、魔法使いのお姉さんに力強く抱擁され窒息死寸前になり、マッチョ騎士さんからは生暖かい視線で頭をぐしゃぐしゃと撫でられ、義賊さんにその日のささやかながらも豪勢な夕飯を横取りされそうになったのを嫌味賢者が阻止し、いい笑顔で何の反応も示さないわたしに手ずから食べさせていたことなど、一切記憶にございません。

早くも主人公の恋のフラグがボキっと折れました。

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