海の女
もう 人の夢も見あきた
もう 人の愛にもあきた
すでに 人の死の寒さに慣れて
すでに 去った人への情もなし
とくに 人の心の穴を
とくに 虚ろな芯を捨て
ただ 漂う身体のままに
ただ 海に溶けると願う
まだ 死ねぬというわけを
まだ 世に残す人への未練とするならば
いっそ残した彼の人と
いっそ ともに溶けて消えたい
でも 絡めた手が離れた哀しさを
でも もう一度取ろうと伸ばした腕が
しかし 海水を掴んだ冷たさに
しかし 心の空虚に響いた
嗚呼 言いましょう 我が胸の内
嗚呼 溶けてしまった胸をひらく
嗚呼 二人共にと誓ったけれど
嗚呼 外れてしまったこの手をみやる
嗚呼 海の底へと一人沈んだあの日の心
嗚呼 夢と散った我が思い
嗚呼 海面に浮かんだとして
嗚呼 彼の人の瞳の端に映ったとしたら
嗚呼 握られることのなかった手の冷たさを
嗚呼 微かに温めることができようか
もう散った我が夢の痕
すでに融け始めた我が身体
とくに海水の冷たさに
ただ彼の人のぬくもりを忘れ始めて
まだ残る我が思いだが
いっそ全て消えてほしいと願うが
しかし惜しいと哀しいと嘆く
嗚呼 無情な彼の人と我が世
嗚呼 憎らしき彼の人を憎み切れぬ我が心だから
嗚呼 陽炎の世へといざさらば
ほら 消えゆく人の夢の世へ
海って綺麗ですけど、その分なんかいろんな想いが沈んでいるような気がしてなりません。
ずっと昔から、人間の傍らにあった海を人間はどう扱っているんでしょうか。
あまりに広くて綺麗だから、なんでも受け入れてくれると思いこんでしまいます。
あれ? なんかずれてる気が……
とにかく、読んでくださってありがとうございます。