147.6章 - 第16話 ”マテリアライズ #1/2”
それぞれの前に、小さな体を翼で支え、進み出た4人の副統括の子達。
それぞれの手の中には、捧げ持つように、宝石箱が。
「「「「どうぞ(、なの)」」」」
宝石箱の中のベルベット地のクッションが効いた内張りから取り出されたのは、普段使いに留めていたアクセサリー。
記憶の封印と言いますか、精神的退行と言いますか、ルナリスに捨てられたと勘違いして自暴自棄になり。記憶喪失まで引き起こした、アレイスター王国での時間。王都で買ったアクセサリー。あの時の記憶はしっかりと統合され、今もきちんと思い出すことができます。
そして改めて、自分の意思と気持ちをしっかりと告げて。エンゲージメントアクセサリーとなった”不朽の束縛”とは別に。いろいろな意味で転換点となったあの出来事も含め、全員の想い出として。2人に贈り直し、2人から私へも改めて贈ってもらったそれ。
武器防具と並行して、私達の正式な装備としての強化も施してもらいました。
本当であれば、アメティスタに一から作ってもらったアクセサリーにしたかったのですが……あの時ばかりは、記憶の問題があったので。彼女には謝って、代わりに強化を任せる方向にさせてもらったのです。アメティスタは、気にしていませんでしたが……。
「普段使いはしていましたので」 「見覚えのある方も多くいらっしゃいますよね」
「旧アレイスター王国王都で購入したアクセサリーです」
「改め……て、想いを籠め……贈りあいました」
「それを、武器防具とあわせて、強化してもらったんです」 「エンゲージメントアクセサリは、”不朽の束縛”ですが、それとはまた別の、思い出のアクセサリーですね」
「性能も大事ではありますが」
「御覧いただいた……後……大事な発表が……あります」
`え、なになに`
`ここまで引っ張るって、ナオさん達らしくないし、よっぽど?`
`性能がそんなにやばいのか?`
`後って姫が言ってたから、性能の話しとは多分、違うよね`
`まさか、結婚式……?`
結婚式……確かにそれも考えたいのですが、女性同士ですと、現実ではいろいろとハードルが高すぎて。それに2人は戸籍もないですし。なんちゃっての式しかできない……ですよね? あれ……結婚式自体はできるのかな。今度調べてみましょう。よほど場所を選ばないと無理な気はしますが。
「性能には疑問も覚えられるかもしれません」「まずはとにかくお見せしますね」
3人ともが、大切に胸の内にアクセサリーをかき抱き、ステータス画面を見せます。
その内容は共通して同一。異なるのは外見だけ。
ルナリスの瞳にあわせたような、澄んだ青色のサファイアに、ミスリル銀が虹色の輝きを秘めた、シックながらも神秘的なイヤリング。
紗雪のツーサイドアップの髪に飾られる、ミスリル銀の蝶々の髪飾り。深紅の大粒のルビーを起点に、髪に沿うチェーンには小さな宝石がキラキラと輝く。
そして、それぞれと対になるような私のアクセサリー。
天使の私のハーフアップの白髪に合わせる、蒼と銀色のベースに、深い青のサファイアで彩られたバレッタ。
堕天使の私の姫カットの黒髪にあわせる、黒と金色のベースに、深紅のルビーで彩られたバレッタ。
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☆5 絆のアクセサリー
強化値:10 (安全強化上限10)
特性:状態異常耐性(中)、解毒、病魔抑制、初級治癒魔術、空間収納(小)、
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`前からしていた☆4耐性の腕輪の上位互換?`
`さっきまでの神器級ラッシュと比べると……普通? あ、いや、特別な思い出なのはわかってるけれど`
`制作で、わざわざ付けたにしては特性の性能に違和感が`
`病魔抑制とか、収納って、住民向け?`
`お守り? 的な?`
`わざわざ治癒魔術? しかも初級? 店売りポーション並みだよね。切り傷を治すとかそれくらいのやつ`
ざわつくコメント欄。まあ、そうですよね。正直プレイヤー装備として考えれば、必要なのは状態異常耐性のみ。それも、このレアリティーであれば、もっと上位の装備も今となってはあるでしょう。後はしいて言えば解毒?
ちなみに、以前とりあえずでつけていた試練の間で手に入れた☆4耐性の腕輪は、同じ効果で重ねても意味がなかったので、外しています。
「皆さんのコメントもよくわかります」「さて……次にこちらをご覧ください」
と、紗雪が私達の姿をワイプ(視聴者から見える配信画面に別の映像を重ねて表示する)に移動させ、メインにはある場所を映し出します。
`なんだろ、ここ。画角せまいな`
`たぶん、ナオさん達の現実の配信スペース? のごく一部かな?`
`なんか、祭壇? 台座? があるけれど`
`周りは映したくないみたいだね`
映し出されたのは、私達の現実の家(タワーマンションワンフロアの部屋)にある、配信スペースに据え付けた、ある機材の台座部分。周りの機材は機密のため写らないように画角を調整してあります。
「新しいメニュー画面をこうして……っと」「あ、この機能はまだ皆さんのメニューには実装されていないので、少し待ってくださいね。デウスから配信のために特別に、先行アクティベートしてもらっています。」
可視化モードにして、紗雪とルナリスも同様に、メニュー画面のある1つの機能を触ります。
`新機能? アプデの予告的な?`
`マテリアライズ……?`
`なんか、装備特性にチェックを入れてってるね`
`1個選ぶごとに表示されているMCが跳ね上がってるけれど`
`1個、20憶MC……? とんでもない金額なんだけど?`
`え、何をするの? これ`
`マテリアライズ……いや、まさかな……?`
`いやいやいや、それなら、特性選択してたのはなんだよ?`
`おい……おい……?`
`嘘だよな? マジで言ってる?`
`え、どういう事?`
`いやでも、デウスなら`
`ありえない。ありえないって!`
`なになに? 何が起きるの?`
さすがにこういうゲームをするようなユーザーさん達が多いですからね。何が起きるか予測できた方も多い様子。それでも、信じられないようですが。いえ……私もいろいろ秘密の経験をしてきていなければ、到底信じられませんが。
「さあ。歴史的な瞬間になりますよ」「しっかり、ご覧くださいね」
ポチっと……決定を押し、消費される膨大なMC。今回はDeus ex Machina Corp.からのプレゼントというか、経費扱いで事前に渡されたMCから消費されています。さすがに3人で80億MCは賄えません……。
きらきらと神秘的な光が、現実側の台座、祭壇の上に集まってくる。
魔力を映す視界には祭壇を中心に、とんでもなく濃密な魔力が集まってくる様子がはっきりと見える。
今あの部屋、リラクゼーションルームの一角にはDeus ex Machina Corp.から運び込まれた機材群が設置されています。
SEO内部から供給されたMC。すなはち魔力をそれら機材が中継、加工し、起こす奇跡。
『物質創造の魔法』
4倍の時間の流れの差がありますので、実際にはほんのわずかな時間。しかし、SEO内部からはゆっくりと見えるその過程。徐々に輪郭を成していく、思い出のアクセサリー達。
初めはぼんやりとした光の輪郭。そこに魔力が集約されていき、確かな形を成していく。
やがて祭壇の上には、確かな存在感を放つ、宝石に彩られた4つのアクセサリーの姿が横たえられていました。
`うっそだろ……`
`3Dプリンターとか目じゃない`
`いや待って、宝石に……ファンタジー金属? これ`
`そこはさすがに、普通の銀とかプラチナなんじゃ`
`いやいやいや、そういう問題じゃなくて`
`これはさすがにマジックっていうか、映像トリックだろ?`
`そうそう。事前に作ってあったアクセサリーに、CGかぶせて隠してあっただけだよ。映像だし、それくらい別に普通にできる`
`現実はこっちの4分の1の時間だから、1分も経ってない。仮にあの材質が樹脂だったとしても、まず時間的に無理`
`まさか宝石、本物じゃないだろうな……えらい綺麗だけど`
`ねぇ……それもだけれど、さっきの特性を選んでたのは? MCがそれで跳ね上がってたよね`
`いくらデウスでも……`
`冗談きついって`
とどまることを知らぬコメント欄の流れに、こっそり。いたづらっぽく微笑み合う私達。
「皆様……真実を……お見せするため。わたくし達……は、ログアウト……します」
「SEO内から見てくださる方は、配信の視聴モード変更をお忘れなく。タイムシフトもリアルタイムで生成されますので、無理はなさらず」
「では、少しお待ちくださいね」「ログアウトしてできるだけ早く、配信に戻ってきます」




