最終話 恋愛対象
『……は……?』
葵が固まる。
少し無言の時間が流れ、やがて葵が口を開いた。
『おい薫、それ内緒にする約束だっただろ!』
どうやら葵は流れを読んで合わせてくれたようだ。
察しが良くてありがたい。
「え、あぁ、ごめん。言っちゃったわ、笑」
僕もそれに合わせる。
と同時に、クラスが一気にざわついた。
「やっぱ付き合ってたんだ!」
「春日部さんと付き合えるとか羨ましいぞ薫この野郎!」
教室中からヤジが飛ぶ。
こうして僕たちは、“クラス公認カップル”となった。
ーーーその日の夜ーーー
いつものゲーム。
いつものVC。
なのに今日は、いつも通り話せない。
「あ、葵……?」
『薫……あのさ』
僕は呼吸を止める。
「今日変なこと言っちゃってごめ――」
『なんでそっちから言っちゃうんだよ! このバカ!』
僕の言葉を遮り、葵が今にも泣きそうな声で言う。
「……どういうことだ?」
『俺から! お前に! 告白しようと思ってた!! なのにお前は……!』
「おいちょっと落ち着けよ。どういうことだよ」
『落ち着いてられるかよ!
告白のシチュエーションも、セリフも、全部考えてきたのに!
お前のせいで……台無しだよ……』
「……ごめん。でもまだ状況が掴めてなくて」
『だから言ってんだろ!
俺はお前が好きだって』
「……っ!?」
『俺が女になってからずっと誘ってたのに気づかないとか……この大馬鹿野郎』
「もしかして、この間出かけた時からずっと……?」
『もっと前だよ。女になってからずっとって言っただろ?』
「……すまん」
『いや、いいんだよ別に。
今こうやって言えたわけだし』
『で、結局お前はどうするんだよ。
まだ答えもらってないぞ』
「今まで俺は、葵のことを親友だと思ってた。
でも、葵が俺に抱いてた感情は違った」
『……はは。やっぱそうだよな、すま――』
「俺はそれが、たまらなく嬉しかった!」
「女の子として生きていく上で、もし葵が他の男と付き合って、そのまま生きていくことを考えたら夜も眠れなかった。
だから今こうして、葵が俺のことを好きでいてくれるのが、俺は本当に嬉しい」
『ってことは……いいのか……?』
「ああ、もちろんだ。
これからよろしくな」
『ううっ……ぐすっ……薫……ありがとう……!』
「そんな泣くなよ〜。
肝心の可愛いお顔が台無しだぞ〜」
『お前、付き合ったからって調子乗んなっ……! この野郎!』
ーーーーーー
いつもの朝。
見慣れた天井。
使い慣れた寝心地のベッド。
いつもと変わらないはずの朝。
でも今日は違った。
葵が同じベッドで、こちらを向いて横になっている。
そして、口を開く。
『おはよ、薫』
ここまで読んで頂きありがとうございます!
今後気が向いたら第二章もぼちぼち作っていこうと思っておりますので、是非★★★★★とブックマークをしていただけると幸いです!




