第七話 距離
翌日。
僕と葵の「近さ」に違和感を覚える人間は、如月さんだけではなかった。
「そういや、春日部さんとお前って付き合ってんのか?」
そう聞いてきたのは、僕の友達――白露翔真である。
「んなわけねぇだろ。仲はいいけど、付き合ってねぇよ」
「なんだよ〜、おもんね〜」
「お前なぁ……」
僕は焦っていた。
如月さんも、翔真も。
僕の周りの人間が、次々と同じ「勘違い」をしている。
つまりそれは、僕と葵が周囲から見て
「こいつら、絶対付き合ってるだろ」
という距離感のまま過ごしている、ということに他ならなかった。
そうなってしまえば、もう僕に有利な要素は何もない。
「ねえ、葵と薫くんが一緒に帰ってるところ見たんだけど……
もしかして二人って付き合ってる!?」
今度は、葵や如月さんとは違うグループの女子にそう聞かれた。
僕はもちろん、即座に否定する。
いよいよ、完全な第三者にまでそう思われてしまった。
しかも、「一緒に帰っている」という明確な証拠付きである。
これでは、少しでも葵と関わった時点で、周りからの偏見が強まる一方だろう。
となれば――
残された道は、極端なものしかなかった。
――――――
「ってことで、俺とお前はこれから一週間、会話禁止だ。わかったか?」
『は? キツ』
帰宅後、僕と葵はゲームをしながら、VCで会話をしていた。
「付き合ってるって勘違いされるよりはマシだろ」
『そりゃそうだけど……それだと、また色々大変だろ』
「何がだよ」
『それは……その……まあ、いろいろ!』
「どうしたんだよ、急に声でかくして」
『うるせぇ。鈍感野郎。お前のせいだよ』
「意味わかんねー……」
(鈍感野郎って、どういうことだ……?)
そう思いはしたものの、そこに深く踏み込むことはしなかった。
「まあとにかく、明日からは会話禁止だ。分かったか?」
『ったく……しょうがないな、クソが』
「ありがとよ」
―――翌日―――
「……」
『……』
「別に、学校以外なら話してもよくねぇか?」
『…………』
「なんか言えよ」
『だまれ……』
「あと、学校入る時はタイミングずらすからな。
お前が先に行って、しばらくしてから俺が行く」
『あいよ』
しばらくして、僕と葵は学校前に到着する。
打ち合わせ通り、葵を先に行かせ、その少し後を僕が追う。
その後も、一切会話することなく一日を終えた。
―――帰宅後―――
再び、ゲームのVCを繋ぐ。
「これで、誤解が酷くなるのはある程度抑えられたかな」
『はあ……まあ、そうかもな』
「マジでお前どうしたんだよ。
まだ風邪、治りきってないんじゃないか?」
『いや、すまん。なんでもない。
ほら、さっさと始めるぞ』
「おう」
――――――
しかし、物事はそう簡単には進まないものであった。




