第四話 親友とデート!?①
入学して二週間が経った。
僕は……陰キャとも陽キャともつかない生活を送っていた。
一方の葵はというと……。
『おっはよ〜!』
葵の声が教室に響き、そのまま女子グループの会話に入る。どうやら来週行くカラオケの話をしているようだ。
そう、春日部葵は持ち前のコミュニケーション能力とその美貌を活かし、いわゆる「一軍女子」になっていたのである。
……正直、僕にとっては複雑だった。
というのも、あまり目立たれてしまうと、少しでもボロが出たときにバレる確率が高くなる。
加えて、この葵の顔だ。なにせ早々に「クラスのマドンナ」扱いされているのだから、絶対に色んな男子に告白される。これは間違いないと、僕は確信していた。
帰宅後、葵からLIMEが何件か送られてくる。
僕は返信するのを面倒に思い、そのまま風呂に入ってしまった。
五十分後、風呂から上がってスマホを確認する。
スマホを見てから手に取るまで五秒。その間に、スマホのバイブレーションは二回振動していた。
嫌な予感がした。
恐る恐る画面を開き、通知を確認する。
〈……LIME……葵:40件のメッセージ〉
やっぱりだ。葵はパニックになると、すぐ大量のメッセージを送ってくる。
中身を確認する。
『なあ、俺今週の日曜カラオケ誘われたんだけどどうしたらいい』
『俺、女物の服まだ持ってねえぞ』
『(URL)これとかどうだ?』
『マジで頼むって、俺服のセンスないって』
確かに、葵の提案した服のほとんどが、常人ならまず着ないであろうものだった。
このようなメッセージが三十件以上続き、最後に二件、十分後に付け加えられていた。
『いいこと思いついた』
『今度の土曜、一緒に服買いに行こうぜ!』
なるほど、それはいい!……いや、待て待て。
そりゃ僕と葵からしたら、ただの買い物かもしれない。
だが周りから見たらどうなる。
超絶美少女と冴えないただのフツメンがデートしてる、みたいになるだろ!
これは即刻断らねば……。
しかし僕は少し考え、大事なことを思い出す。
……断るのは、僕にとって最適解かもしれない。
だが、ここで断ったら葵はどうなる。
葵があのクソダサコーデで、一軍女子の中に放り込まれることになってしまうだろ!
そんなことになるくらいなら、僕に対する世間の目なんてどうでもいい。
――と、僕は心の中で少しカッコつけてみる。
実際問題、葵がパニックになっている中で断ったら、僕は葵からの信用を失うかもしれない。
「分かったよ。でも同じ学校の奴らに見つかったらまずいからな。ちょっと遠くの方まで行くぞ」
僕はそうメッセージを送り、その日を待った。
―――三日後、土曜日―――
『うぃ〜』
「お、来たか」
葵は学校のジャージを着ていた。まあ、現段階での最適解だろう。
僕は葵と電車に乗る。今日は遠出だから、一時間は乗りっぱなしだ。
時間は十時頃。車内は、ほぼ全員が座れるくらいには空いていた。
『にしても、なんでわざわざこんな遠くまで行くんだよ〜』
葵が愚痴を言う。
「この前言っただろ。お前と俺が一緒にいるところを、クラスメイトの一人でも見ようもんなら大騒ぎだぞ」
『え〜、俺は全然いいけどな〜。見られても』
「お前は大丈夫でも、俺が大丈夫じゃねぇんだよ馬鹿野郎」
『別に見られてもいいじゃん。独り占めしてるみたいで』
「……お前、その顔でそういうこと言うのやめろ。頭がおかしくなりそうだ」
『ふ〜ん』
葵が得意げに笑う。何を考えているのか、さっぱりわからない。
やがて電車は、僕たちが目指していた街に着いた。
電車を降りて二人で軽く昼飯を食べ、少し歩いてから、目星をつけていた店に入る。
『おお……すっげぇな、これ……』
「ここなら、お前に似合う服もたくさんあると思ってな」
僕と葵は、とりあえず店内を見て回る。
「これとかどうだ?」
『一旦、着てみるか』
二人で試着室へ向かう。
『どうだ、着てみたぞ』
「お〜、結構かわいいな。だいぶアリだ」
『じゃあ、とりあえずこれは買うことにするか』
『これはどうだ?』
「お、お前にしてはいいチョイスだな」
『よっしゃ』
―――二時間後―――
「だいぶ……買ったな……」
僕は両手に袋を二つ抱え、その重量に手が悲鳴を上げていた。
『しょうがないだろ。今、なんも持ってないんだから』
「でも、俺に全部荷物持たせるのは酷いと思うんだが」
『きゃー、女の子に荷物持たせるなんてひどーい!』
「クッソ、都合よく使いやがって……」
そんな僕と葵のカオスな旅は、まだ始まったばかりであった。




