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第三話 違い

翌日。


僕はいつも通り支度をし、学校へと向かう。


住んでいるところからそこそこ距離がある学校なので、僕は葵と一緒に電車通学をすることにした。


駅まで徒歩、その10分間隣に歩いている葵の見た目が、僕の知っている葵ではないこと、それが僕に異様な高揚感をもたらしていた。


「とりあえずお前の一人称は『私』限定な。間違っても『俺』とか言うなよ。」


『当たり前だよ。その練習はしてきた。』


「てか思ったけど、歩き方とか完全に女の人のそれだよな。これも練習したのか?」


『なんかこれ普通に歩こうとしてもこうなる。まあ変にならないのはありがたいけどな。』


そんな話をしている間に駅へ着く。

改札を通り、しばらくして電車が来て、乗り込む。


ただこの時間は通勤・通学ラッシュである。

電車内は人で溢れかえり、なんとか人混みの隙間に入り込むので精一杯だった。


僕と葵は扉の近く、座席の仕切り板に寄りかかる形になる。ここしか立てるスペースはない。


電車がカーブに差し掛かる度に、葵と身体が密着する。


(いい匂いするな…。)

僕はそんなことを考えながら、スマホを見て時間を潰した。


ーーー30分後ーーー


学校に着いた。


今日はどうってことない登校日のはずなのに、昨日の入学式より僕は緊張していた。


一方の葵は…。


『……すっげぇ…これが高校………。』


そんなことお構いなしのようだった。


校内を少し歩き、教室に入る。


葵の美少女ぶりにクラスが少しざわついたが、特別何か起きる訳でもなく、平穏な学校生活が始まった。

葵としては嬉しい限りだろう。僕も同じである。


------しかし、そう簡単に物事とは上手く進まないものだ。


授業が終わり、休み時間に入る。


ここで新しい問題が発生した。


葵が僕のところへやってきて、小声で言う。

『なあ、俺ってどっちのトイレに入ったらいいんだ?』


正直なところ、盲点だった。

TS後に一番重要となりうる事の話を、昨日全くしていなかったのだ。


「流石に女子トイレだろ。逆に男子トイレにお前いたらびっくりだよ。」


『マジか〜…、俺そんな勇気無いって。』


「お前は他人から見たら女だ、分かったか?」


『ったくしょうがないな。』


そう言うと、葵は女子トイレへと入っていった。


しばらくして、葵が帰ってきた。

なんだかやけに疲れた顔をしている。


『精神的にきっついわ…これ…。』


「いいじゃん合法的に女子トイレ入れて。」


『なんも良くねぇよそもそも女子トイレに入るって罪悪感と毎回押し寄せる違和感と戦ってんだよこっちは。』


「えー俺からしたらご褒美でしかないけどな。」


『んな事言える身体に感謝しろよ〜。女の身体にはお前が思ってるほど夢はないぞ〜。』


「見たことないんだからしょうがないだろ。そんなこと言うならお前が見せてくれよ。」


『ちょっおまっ馬鹿』


「冗談だよ冗談!」

僕は笑いながら言う。

冗談にしては少しやりすぎたかもしれない。このご時世にこの発言は一発アウトだ。


『……。』


葵が喋らない。少しだけ、沈黙が流れる。


「なんだよこの間は。」


『うるさい。』


「言いすぎたな、ごめん。これ完全にセクハラだわ。」

僕は葵との友情にヒビが入りかねないやらかしをしてしまったことに焦りを覚える。


『そういうんじゃない…。』


------葵が呟くが、クラスの喧騒に掻き消され、薫はその内容を理解出来なかった。


「……なんか言ったか?」


『いや……なんでも。』



その後特に変わったこともなく、葵の初登校は無事に終わりを迎えた。


しかし、葵は心に今までにないものを抱えていた…。

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