第二話 作戦会議
見慣れた扉が開き、葵の部屋へと入る。
部屋中に貼られた車のポスター、勉強道具が乱雑に置かれた机、2ヶ月前のまま貼られっぱなしのカレンダー、その趣味全開かつ荒れた部屋は、僕がよく見慣れた葵の部屋そのものであった。
『何固まってんだよ〜』
彼女、いや…彼?が笑いながら言う。と同時に僕の肩を小突く。痛い。
「んな事言われても…。」
何より、僕はまだこの現状を受け入れきれていない。
TS、と言うのだろうか。僕だってこのジャンルの作品は嗜んでいる。
しかしこんなことが本当に起きるのか、僕は不思議でしょうがなかった。
『まあ座れよ。まずはこうなった経緯だな。』
僕と葵は部屋の真ん中にあるローテーブルに座り、話を始める。
『まず俺がお前に送ったメッセージの内容、そこに書いた事情ってのが、見てわかるように…これだ。』
『朝起きてたらいきなりこうなっててな…。親には不審者扱いされたけど、俺の詳細な個人情報言ったら何とか納得して貰えたから、そこは安心して欲しい。』
『お前も信じてくれるか?』
話の内容はこういうことだった。
話を聞く限り、こいつは葵で間違いないようだ。
あまりにも聞きなれた話し方と、内容の整合性が取れている。
「当たり前だろ。俺はまだお前に嘘をつかれたことがないからな。」
『良かった〜〜〜ここでお前何者だよ!とか言われたら本当に生きる希望失うところだったぜ。』
『あと俺1回だけ嘘ついたことあるわ、すまんな。』
俺はそんなに重大な役割背負ってたのかよ。ってか嘘つかれたことあったのかよ初耳すぎる。
「で、お前は今後どうするんだ?」
「このことを学校で言ったら大騒ぎだろうな。」
『それなんだがな、出来ればこのことは俺とお前だけの秘密にして欲しい。』
「学校の奴らには言わないってことか?」
『そういうことだ。できるだけ平穏な学校生活を送りたいんだよ俺は…。』
「了解、じゃあ学校の奴らからどうやってバレないようにするか、作戦会議だな。」
『いいねぇ〜。』
「まずクラスメイトにはお前が女だという前提で〜……。」
ーーー3時間後ーーー
「よし、こんなもんでいいかな。」
内容は次のようなものである。
・新しいクラスメイトには、葵が女であると言い切り、それを卒業まで隠し通すこと。
・葵はもし告白されても絶対に断ること
・もし何かしらのやらかしがあって葵が元男だとバレそうになったら薫が全力で援護すること。
『うん、あのさ、作戦会議としてはめちゃくちゃ良かったと思うんだけど、一旦外見てみろよ。』
真っ暗であった。
時計を見ると、時刻は6時半を過ぎていた。
「うわやっべ!もう帰んねぇと!とりあえずお前明日学校来いよ!新しいクラスメイトからの印象薄くならないうちにな!」
『おう、ってかお前なんならうち泊まってくか?今日親帰ってこないし。』
「あー、そうしたいところだけど同年代の美少女と一緒に寝るのは俺がもたないから帰るわ。」
『ちょ、美少女って、おま』
「じゃあな〜!」
『ちょっとぐらい察しろよ、ばか…。』
------その言葉が薫の耳に届くことはなかった。




