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4朝 栗の衣
坂道を走っていると、足元に「栗ガキ」が落ちていた。
トゲトゲのイガが割れ、中からツヤのある栗が顔をのぞかせている。
ふと立ち止まり、しゃがんで見つめる。
栗って、実にたどり着くまでに、二度も衣を脱ぐ必要があるな。
まず外側のイガ、そして薄茶色の皮。
まるで、ようやく本当の姿にたどり着くまで、時間と守りが必要みたいだ。
走りながら、他にもそんなものはあるだろうかと考える。
玉ねぎ?卵?
人間の心が、案外そうかもしれない。
一度では中身まで届かない。外側を破って、もう一枚剥がして、ようやく本音が見える。
呼吸が荒くなるたび、思考も少しずつ澄んでいく。
朝の空は高く、秋の風が頬を撫でた。
栗ひとつでこんなに考える自分に苦笑しながら、また坂を登っていく。




