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どうする元信  作者: Aju
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1 薄暮の岡崎城

2023年11月〜12月、あの大河ドラマが終盤にさしかかっていた頃書いた作品を改稿したものです。

(ちなみに当時某テレビ局に確認しましたところ「タイトルに著作権は及ばない」との見解でした)

自分でもずっと不完全燃焼な作品でしたので、無駄な文章を省き、表現も改め、いろいろ書き足しました。

結局SFですね。。(^^;)

改稿版は順次「連載」の形で投稿してゆきますので、お楽しみいただければと思います。



 岡崎市は愛知県の中ほどにある人口38万ほどの地方都市である。どこにでもある小さな地方都市だが、徳川家康生誕の地として知られる。

 市の中心部にある岡崎城は某テレビ局の大河ドラマの影響もあり、休日には観光客らで賑わうようになった。

 通称岡崎城と呼ばれるそれは、城と言っても石垣と堀を残すだけの城跡であり、江戸時代の城郭建築が残っているわけではない。二の丸の一部も国道1号線に削り取られ、土産物店や飲食店、お城風の博物館などが建設された史跡公園になっている。

 二の丸跡の一角に建っている徳川家康博物館は、ドラマの放映中はテーマ館としての展示も行って観光客で賑わっていた。


 その岡崎城跡公園の中で小さな不思議が起こったのは11月初めの連休初日、西の空が茜に染まり公園内のそこここに淡い闇だまりの気配が漂い始めた時分のことだった。


 武将隊の出し物も終わり、そぞろ歩く観光客の姿も少なくなった史跡公園二の丸跡に建つ家康博物館の南側。植え込みにそびえ立つ大(むく)の木と博物館の壁との間の狭い空間に、一瞬だけ白い光が現れた。

 公園のメインの場所からは死角になるような場所で、そのあたりにいた観光客数人は誰も気づいていない。


 気がついたのはただ1人、岳川(たけかわ)(まりん)だけだった。




 (まりん)は17歳の高校生だ。

 県内の普通科高校に通う歴史大好き少女、いわゆる歴女だ。成績は中くらいだが、趣味の力もあって日本史の成績だけは頭抜(ずぬ)けている。


 まりんの歴女歴は、中学1年の時に刀剣の付喪神を操って戦うゲームを知ったことに始まる。

 ただ、ゲーム自体は彼女にとっての沼にはならなかった。このゲームを題材にした映画や舞台もあったが、まりんの場合、そうしたキャラクターや役者が推しになったりすることもなかった。その意味では、このゲームファンとは一線を画している。

 まりんの興味は、それを入り口に実際の史跡や歴史の方に向いていったのだった。


 中学では学校の図書館で歴史関係の本を片っ端から借りては読み漁り、メジャーな歴史小説はあらかた読んだ。中学の2年生からは小遣いを貯めて実際の史跡を訪れる、ということも始めた。


 このあたりから、次第に友達と話が合わなくなってゆく。まりんのマニアックな話についてこれる友達がいないのだ。

 高校生になってからはバイトで貯めたお金で史跡巡りをすることが、まりんの至高の楽しみになっていった。

 もちろん、話の合う友人などいないから一人旅である。群れてわきゃわきゃするよりは一人旅の方が気楽だし、思いつくままに好きなところへ行ける。


 戦国の史跡巡りが、彼女にとっての沼になった。そして、その興味の対象はやがて1人の戦国武将へと収斂してゆく。


 ()()は、徳川家康。


 まりんの家がある刈谷から、岡崎城は名鉄1本で行ける。という環境もあったかもしれないが、何より、カブキ者の信長や金ピカ好きの秀吉のような派手な天才はまりんの肌に合わない。


 地道にコツコツと忍耐強く、己れの才に溺れることなく、他者ひとから学び、慎重に恐る恐る前に進む。

 およそ「英雄」らしくない凡人くささを持ちながら、最後には天下を取って江戸265年の太平を築いてしまう家康。見た目も信長のようなイケメンではない。

 いわゆるギャップ萌え‥‥というやつかもしれない。


 その日もまりんは名鉄線の特急と各駅を乗り継いで岡崎城にやって来た。

 まりんの場合、こういうメジャーな史跡には朝から来たりはしない。観光客が引いていって人が減ってゆく午後3時くらいに着くように出発する。


 人ごみが好きでない——ということもあるのだが、目の前の風景から「現代的なもの」を除いて当時の風景を想像してみる——という史跡の楽しみ方をするためなのだ。

 自分だけの特別な風景を見るには、観光客の姿が減り、少しずつ暗がりに包まれ始めてゆく夕方にかけての方がいい。


 ここには櫓が建っていた。

 家康の時代、この石垣はなかった‥‥。


 そんなふうに風景を頭の中でARのように改ざんしながら、そのあたりを歩く。


 自分が家康の近習にでもなった気分になって、空想の家康(この城を回復したばかりの当時はまだ松平元康だっただろう)と共に歩くのである。


 義元が討ち死にし、今川は衰える。氏真は弔い合戦に動こうとはしない。

 ここは、東の信長と結ぶべきであろう‥‥。


 まりんの想像上の元康は、そんなふうに考えながらまりんと同じ風景を見ているのだ。


 そんな自分だけの世界に浸っていたまりんの視界の端に、一瞬だけ白い光が閃くのが映った。

 ん? カメラのフラッシュ?

 ‥‥‥にしては光り方が柔らかい。


 光の見えた方に視線を移し、現実世界に意識を戻してみる。

 撮影をしているような観光客らしい姿はない。

 武将隊の出し物も終わり、土産物店も閉店準備に入った時間帯。ただ広いだけの二の丸跡は、人の姿もまばらだった。


 目、おかしくなったかな?


 まりんが自分の目を少しこすって光が見えたあたりを凝視すると、家康博物館と植え込みの間の薄暗がりの中に人影があるのが見えた。

 小柄な人影で、そのシルエットは少し太っているいるようにも見える。





以前の作品は途中までそこで書き直してしまったので、見えなくしました。

後になって「比較できたら面白い」ということに気がつきました。(手遅れです。すみません。。)m(_ _;)m

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