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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第10章 俺、お祭りに行ってきます
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俺、お祭りに行ってきます6 ~大樹と八咫烏~

私はただ、呆然と巨大な樹木を見上げるしかなかった。先ほどまで少女だったものが、今や私の想像を遥かに超える巨大な存在になっている。その神々しい姿に、私は恐怖よりも驚きを感じていた。

その時、どこからかうめき声が聞こえてきた。振り返ると、そこには見慣れた顔があった。前世の会社の、上司や同僚たちだ。彼らは私に向かって、ニヤニヤと笑いながら近づいてくる。

「おい、またミスしたのかよ、お前は」

「本当に使えないよな、あいつ」

耳元で聞こえるのは、前世で散々聞いた陰口や嫌味の数々。私は反射的に右手を突き出し、彼らを追い払おうと波動拳を放った。しかし、波動拳は彼らをすり抜けて、どこかへ消えてしまった。

「なんだ、このザマは」

「やっぱり使えねぇな」

彼らの言葉は、容赦なく私の心に突き刺さる。気がつくと、別の方向からも誰かが近づいてくる。彼らは、前世の学生時代の友人たちだった。

「お前、本当にダサいよな」

「こんな奴と友達だったなんて、恥ずかしいわ」

彼らの言葉は、まるで呪いのように私の心を蝕んでいく。私は恐ろしくなって、たまらず巨大な樹木の方向へ後ずさりした。

その時、一匹の狐が、私の足元にすり寄ってきた。先ほど、私を禁足地へと導いた狐だ。狐は、口にくわえていた宝石のようなものを、私の手にそっと置いた。

その宝石を手に取った瞬間、私の体は、ふわりと宙に浮かび上がった。そして、空高く、舞い上がっていく。

(うそ……何これ……)

下には、うめき声と陰口を叩く前世の同僚や友人の姿が小さくなっていく。私は、宝石の導きによって、空高く、そして遠くへと舞い上がっていった。


私が宙に舞い上がっていくと、会社の同僚たちや学生時代の友人たちが、悲鳴に似たうめき声を上げながら、私を追いかけようと手を伸ばしてきた。

「くそっ、待てよ!」

「お前だけいい思いしやがって!」

彼らの怨嗟の声は、空に舞い上がっていく私に、容赦なく浴びせかけられる。私は、必死になって空高く逃げていった。

その時、一匹の狐が、私の行く手を阻もうとする彼らの前に立ちはだかった。狐は、鋭い眼光で彼らを睨みつける。その途端、彼らは悲鳴を上げながら次々と灰にされ、地面に崩れ落ちていった。

「サンキュー、狐さん」

私は、その光景に驚きながらも、狐が私を守ってくれたのだと悟り、安堵の息をついた。これで、もう彼らに追いかけられる心配はない。

私が再び巨大な樹木を見上げると、その頂上には、一体何があるのだろうという好奇心が、私の胸を占め始めた。私は、樹木の頂上を目指して、さらに高く舞い上がっていく。

樹木の枝葉に触れるのが、くすぐったいようで、妙に心地よい。さっきまで感じていた恐怖心は薄れ、代わりに、期待のようなものが湧き上がってきた。この樹木の頂上に、一体何があるのだろうか。

私は、急ぐように、樹木の頂上へ舞い上がっていった。


私は、ひたすら巨大な樹木の頂上を目指して舞い上がっていった。周りは夜のはずなのに、妙に明るい。頂上に向かうほど、その光はまぶしさを増していく。

そして、ついに私は樹木の頂上にたどり着いた。

樹木の一番上にある太い枝には、先ほど私と追いかけっこをした、私そっくりの少女が腰かけていた。彼女は、私に気づくと、優しく微笑んだ。

「やっと来たか」

そんな声が聞こえたような気がしたが、彼女は無言のまま、自分の隣に座るようにと、手でジェスチャーした。私は、不思議な気持ちになりながら、彼女の隣に腰かけた。

ここから見る景色は、今まで見たこともないくらいに美しかった。夜空には満天の星が輝き、地上には無数の光がまたたいている。しかし、その光は、私が知っている街の灯りとは少し違うように見えた。

私は、隣にいる少女のことが気になって仕方がない。彼女は一体、何者なのだろうか。

「あの、あなたは……」

私が少女に問いかけると、彼女は何も答えず、ただ私に微笑みかけているだけだった。まるで、私の言葉を理解できないかのように、ただ、そこにいる。


私は、少女の隣に座り、ただただ言葉を待っていた。彼女は何も話さない。しかし、その表情は、私を静かに見つめている。

その時、私の背後から、何かがやってくる気配がした。

「コン」

振り返ると、そこには私を導いてくれた狐がいた。狐は、少女の背中に飛び乗ると、私をじっと見つめている。

少女は、私の手にある宝石に目を向けると、それをそっと手に取った。そして、私に向かって、満面の笑みを浮かべた。その笑顔は、とても無邪気で、それでいて、どこか寂しげに見えた。

私は、ただ呆然とするしかなかった。

その瞬間、少女の体が、光を放ち始めた。

「え……?」

少女の背中からは、見る間に白い翼が生え、全身に白い体毛が生えてくる。まるで映画のワンシーンを見ているようだ。少女の体は、どんどん変形し、ついに大きな白いカラスの姿へと変化した。そのカラスの足は、3本足だった。

私は、あまりの出来事に、あっけに取られてしまった。

白い八咫烏は、しばらく私を見つめると、静かに羽ばたいた。そして、私の周りをぐるぐると回りながら飛んでいる。

「待って……!」

私は、思わず手を伸ばしたが、八咫烏は、そのままはるか遠くの夜空へと飛び去って行ってしまった。

私は、その白い八咫烏の後ろ姿を見送ることしかできなかった。

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