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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第10章 俺、お祭りに行ってきます
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俺、お祭りに行ってきます1 ~元男、浴衣姿にあこがれる~

「マジかよ。今年の夏休み、俺たちまともに休めてないじゃん」

ぼやきながら、私は体操服を脱ぎ、ロッカーの扉にかけた。隣では、恵理が水着のキャップを外し、濡れた髪をタオルで拭いている。珍しく、体操部と水泳部の練習が同じ日に入った。汗と塩素の匂いが混ざり合う更衣室には、私たち二人しかいない。

「まぁ、しゃーないっしょ。次の大会、怜奈も俺も、デビュー戦なわけだし」

恵理がまるで前世の同僚かのように話しかけてくる。こいつも、私と同じく元男だ。しかも、転生者だなんて知ったのは、お互いが高校に入って、偶然話をするようになってからのこと。初めてこの事実を共有した時は、本当に度肝を抜かれた。こいつの転生前の死因は、ベランダからの墜落死。私は交通事故だ。なんともまあ、色気のない死に方ばかり。

「それはそうだけどさ。それにしても、もう少し青春らしいこととかしたいよな」

そう言うと、恵理がニヤリと笑った。

「そうだな。じゃあ、今週末の天満宮の夏祭りとか、どうよ?」

天満宮の夏祭り。この近くの天満宮では、毎年、盛大なお祭りがあるらしい。転生してからというもの、部活一筋で、そういうお祭りの類とは縁がなかった。

「え、行くのか? 俺たち、祭りなんて柄じゃないだろ」

「は? 柄じゃないとか関係ないでしょ。せっかく女子高生になったんだから、かわいい浴衣とか着て、りんご飴とか食べたいじゃん。浴衣に身を包んで、髪をアップにして……」

恵理は夢見る乙女のように目を輝かせながら、両手を合わせる。いや、お前、前世は男だろ。その純粋さに、私は思わず苦笑してしまう。転生前の私は、お祭りなんて記憶にない。大学生の頃、コンビニのアルバイトで、お祭りの臨時出勤をしたことぐらいしか覚えてないな。浴衣姿の女の子たちは、コンビニ店員だった当時の私にとっては、それこそ雲の上の存在だった。

「どうする? 怜奈も行こうよ。女の子たちに混ざって、お祭りを楽しむとか、最高じゃん」

恵理が、さっきまでの乙女口調から一転、男口調で話しかけてくる。

「いや、俺はいいよ。お前が行けばいいじゃん」

「は? 何言ってんだよ。二人で行くに決まってるだろ。それに、駅ナカでとっておきの浴衣が置いてある店を見つけたから、この後買いに行こうぜ」

「浴衣って……」

私の言葉を遮るように、恵理は私に問いかける。私は、恵理のまっすぐな瞳に吸い込まれそうになりながら、苦笑いしてしまう。

「わかったよ。恵理が行きたいなら、付き合ってやるよ。どうせ、俺には予定もないしな」

そう言うと、恵理は満面の笑みを浮かべ、両手を広げてガッツポーズをした。

「よっしゃ! 決まりな! じゃあ、この後、浴衣探しの旅に出るぞ!」

そう言って、恵理は私の肩を叩いた。私は、少し戸惑いながらも、その言葉に頷いた。新しい人生。新しい体。新しい仲間。そして、初めての夏祭り。なんだか、少しだけワクワクしている自分がいた。


その時だった。更衣室の扉が「ガラガラ」と音を立てて開いた。

「あら、怜奈ちゃんと恵理ちゃん、まだ着替えてたん?」

入ってきたのは、体操部の先輩、咲良先輩だ。その後ろには、水泳部の先輩である海美先輩もいた。しまった。前世の男口調で話していたのがバレてないか、と心臓がバクバクと鳴り出す。恵理も同じ気持ちだったのか、

「は、はい! もう少しで終わります!」

と、慌てていつもの女性口調に戻していた。私も負けじと、

「すみません、先輩。すぐに出ます」

と、平然を装って返事をした。

「別にいいんよ。ゆっくりしていきんさい」

咲良先輩はいつもの広島弁でそう言い、ロッカーから自分の荷物を取り出した。その間、海美先輩は、私たちをじっと見つめている。何だか居心地が悪い。まさか、今の会話を聞かれていたのだろうか?

「ねえ、もしかして、天満宮の夏祭り、行くんでしょ?」

海美先輩がそう言い放った。その言葉に、私と恵理は顔を見合わせる。図星だ。

「な、なんでわかったんですか?」

恵理が恐る恐る尋ねる。海美先輩は「ふふん」と得意げな顔をした。

「だって、恵理ちゃん、りんご飴とかチョコバナナとか、屋台の甘いものが大好きじゃん。この時期になると、いつもソワソワしてるんだもん。それに、怜奈ちゃんも、なんか楽しそうだったから」

なるほど、そういうことか。海美先輩の鋭い洞察力に、私たちは感心するしかなかった。

「せっかくだから、私も一緒に行っていい?」

海美先輩は、私と恵理にそう問いかけた。恵理は目を輝かせて「いいですとも!」と即答する。

「こらこら、また甘いもん食べつくす気じゃろ」

隣で咲良先輩は苦言を呈した。

「そんなことないもん! ちょっと、りんご飴を二つと、チョコバナナを三つと、わたあめを四つと、カステラを五つ…」

「それ、全部じゃん! 海美、屋台の甘いもん見つけたら、全部買い占めるクセ、直した方がええよ。麻衣子がいつも苦労しとるんじゃから」

そう言って、咲良先輩は呆れたようにため息をついた。麻衣子先輩は、甘いものが苦手、というよりアレルギーだ。だから、屋台で甘いものを見つけては買い漁る海美先輩の行動は、麻衣子先輩にとって、まさに苦行に他ならない。それを知っているだけに、咲良先輩は海美先輩の行動を咎めているのだろう。

しかし、その話を聞いて、私は逆に興味が湧いてきた。転生してから、そういう甘い食べ物にはあまり縁がなかった。屋台の甘いもの……りんご飴、チョコバナナ、わたあめ。前世では、甘いものは苦手ではなかったが無縁だった。でもせっかく女子高生になったんだ。一度、食べてみたいかもしれない。

「どうせなら、みんなで行こうや。麻衣子ちゃんも誘って」

咲良先輩のその一言で、私たちの夏祭り行きが決定した。こうして、私と恵理、そして咲良先輩、海美先輩、麻衣子先輩の五人で夏祭りに行くことになったのだった。

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