俺、料理を手伝います7 ~一杯のお茶~
ここでは、陸玖目線で物語が進みます。
キッチンが綺麗になった後、僕たちは近所の中華料理店に出前を頼むことにした。餃子に炒飯、麻婆豆腐。みんなでわいわいと賑やかに食卓を囲み、先ほどの騒動が嘘のように楽しい時間を過ごした。
食事が終わり、怜奈と恵理と理沙が帰っていく。玄関で見送る僕の背中に向かって、怜奈が「また明日ね」と手を振った。理沙は僕に聞こえるか聞こえないかくらいの声で、「怜奈のこと、ちゃんと撮ってあげてね」と囁いた。僕は、小さく頷いて、3人を見送った。
リビングに戻ると、いつもの静けさが戻っていた。僕は、ソファに座り、写真部の研究のために買っておいたグラビアアイドルの写真集を開いた。モデルのポーズや、光の当て方、構図など、真剣に研究する。
「はい、陸玖。緑茶よ」
海美姉さんが、湯気の立つ湯呑みを僕の前に差し出した。僕は素直に受け取り、お礼を言う。
「陸玖、本当にごめんなさい。みんなに美味しい料理を振る舞ってあげたかったのに、結局出前になっちゃって……」
姉さんは、まだ少ししょんぼりしている。僕は湯呑みを口に運び、温かいお茶をすすった。
「いいんだよ、姉さん。誰も怒ってないし、むしろ楽しかったよ」
そう言うと、姉さんは少しだけ表情を和らげた。
「でも、お茶だけは美味しく淹れることができてよかったわ」
姉さんが淹れたお茶は、本当に美味しかった。口の中に広がる優しい苦味と、後からくる甘みが、今日の疲れを癒してくれる。
「私はね、今はまだ、美味しいお茶を淹れることしかできないけど、いつか、お茶以外のものも作れるようになりたいの。みんなが、美味しいって笑ってくれるような料理を」
姉さんの声は、決意に満ちていた。その真剣な眼差しに、僕は姉さんの本気を感じた。
「姉さんなら、きっとできるよ。恵理も怜奈も、理沙も、みんな応援してくれるから」
僕は、心からそう思った。姉さんの料理は壊滅的だけど、その心は誰よりも優しい。その優しさが、いつか美味しい料理を作る原動力になるだろう。
「ありがとう、陸玖」
姉さんは、僕の言葉に微笑んだ。その笑顔は、さっきまでのしょんぼりした顔とは違い、とても晴れやかだった。
僕と姉さんの、そして、怜奈や恵理、理沙との、新しい日常が、今日から始まるような気がした。
俺、料理を手伝います 終




