いじめ事件8 ~転生者河合恵理の物語~
ここでは、恵理視点で物語が進みます。
俺、いや私の前世、私が河合恵理になる前は、ごく普通のサラリーマンだった。
ある日、アパートの2階のベランダで洗濯物を干している最中に、足を滑らせて転落した。運悪く打ち所が悪かったせいか、そのまま死んでしまったのかもしれない。怜奈のように意識不明になることもなく、その瞬間に。
次に目を覚ました時、俺は「河合恵理」という女の子になっていた。転生した「河合恵理」は、交通事故に巻き込まれて意識不明だったらしい。その事故のせいで、私がこの体に入り込むことができたのかも。
転生したときは、怜奈と同じように戸惑った。ただ、私は、一度終わってしまった人生をもう一度楽しむことができて「ラッキー!」と思った。しかも、美少女に転生するというおまけつきで。
転生してきた私は、手始めに、女の子としての生活を満喫することにした。メイクのやり方を覚えたり、流行りのファッションを試したり、アクセサリー集めに夢中になったり。前世では絶対に体験できなかったことを、片っ端から試した。
学校では、清純な女子高生として振る舞い、周囲の人間関係を観察していた。田岸のことも、あの資産家の娘だとすぐにわかった。だからこそ、怜奈が田岸に手を出そうとした時、止めに入ったんだ。
「怜奈、俺はお前を助けた。それには理由がある」
私は怜奈の目を見つめ、真剣な口調で言った。
「田岸は、警察も手が出せない権力者の娘だ。あんな形で復讐しようとしたら、お前は確実に消される。そこで、どうだ。俺とタッグを組まないか。」
「タッグ?」
「そうだ。俺は、お前を田岸から守る。その代わり、お前は俺に力を貸してほしい。」
私たちは、転生者同士。この世界で生き抜くために、互いの力を利用する。私は田岸の情報を集めることができるし、怜奈は数学が得意で、頭が切れる。
「面白い。その代わり、俺からも提案していいか。」
怜奈は神妙な面持ちで言った。
「せっかくやり直すことができる人生だ。だったら目指してみないか。完璧超人。」
容姿端麗、頭脳明晰、絶対無敵。その非の打ち所のなさから、人はこれを完璧超人と呼んでいるのだとか。
「受けて立とうじゃないの!」
私たちの新たな物語は、ここから始まる。




