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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第9章 俺、料理を手伝います
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俺、料理を手伝います3 ~海美姉さんの料理奮闘記(序章)~

ここでは、陸玖目線で物語が進みます。

「恵理、このレシピだと、カレールーを入れるタイミングはいつがいいかな?」

恵理さんと海美姉さんの楽しそうな声がキッチンから聞こえてくる。今日は恵理さんが怜奈さんよりも一足早く家に来てくれて、姉さんと夕食の打ち合わせをしている。姉さんの料理は壊滅的だけど、恵理さんと一緒ならきっと大丈夫だろう。そう思っていると、インターホンが鳴った。

「はいはーい!」

僕は嬉々として玄関に向かい、ドアを開けた。そこに立っていたのは、僕が待ち望んでいた怜奈さんだった。

「ごめんね、陸玖。実はもう一人、連れてきちゃって……」

怜奈さんが申し訳なさそうに言うと、その背後から茶色いツインテールの少女が顔を出した。その顔を見た瞬間、僕は絶望した。

「り、理沙……」

理沙は、僕にとっては天敵のような存在だ。写真部の活動中、怜奈さんのレオタード姿を激写しようとする僕を、いつも邪魔してくる。カメラを触ったり、レンズの前を覗き込んだりして、絶対に良い写真を撮らせてくれない。今日もきっと、僕の邪魔をしに来たに違いない。

「陸玖くん、久しぶり! 今日はよろしくね!」

理沙は満面の笑みを浮かべて、僕に無邪気に挨拶した。僕は返事もできず、ただただ立ち尽くすしかなかった。

その時、キッチンから「誰ー?」という声が聞こえ、恵理さんと海美姉さんが玄関にやって来た。

「理沙ちゃんじゃない! 久しぶりー!」

恵理は理沙を見るなり、大喜びで抱きついた。二人は仲が良いらしい。姉さんも理沙の顔を見て、ニコニコと微笑んでいる。

「さあ、みんな中に入って。立ってないで」

姉さんに促され、私たちはリビングへと向かった。理沙は僕の横を通り過ぎる際、ニヤリと不気味な笑みを浮かべた。僕はその笑顔に、今日一日、穏やかに過ごせる保証はないと確信した。


リビングに入ると、姉さんと恵理は食材をテーブルに並べ、すでにあれこれと話し合っている。僕は怜奈と理沙をソファに案内した。

「陸玖くんって、両親はいないの?」

理沙が素朴な疑問を口にした。

「いや、いるんだけど、仕事が忙しくて。ほとんど家に帰ってこないんだ」

僕がそう答えると、理沙は「そっかぁ」と、どこか寂しげな表情を浮かべた。

「理沙の両親も、仕事でほとんど家にいないの」

怜奈が僕にそう耳打ちした。僕は理沙に同情を覚えた。僕たち姉弟も寂しい思いをすることもあるが、理沙も同じ境遇なのだろう。

「でも、今日はみんなと一緒に夕食が食べられるから、すっごく楽しみ!」

理沙は急に顔を明るくして、嬉しそうに言った。僕が「よかったな」と返そうとすると、怜奈が慌てて理沙の口を塞いだ。

「ち、違うから! 遊びに来たんじゃないから! 料理を手伝いに来ただけだから!」

怜奈は必死に否定するが、僕の心はもう別のことでいっぱいだった。最初は、理沙が来てしまったことに絶望していた。けれど、両親がいない寂しさを知っている理沙が、嬉しそうにしているのを見て、僕の心は少しずつ変化していった。

賑やかな食卓を想像する。いつもは姉さんと二人きりで、静かにご飯を食べていた。でも、今日は怜奈と恵理、そして理沙もいる。

「……ま、悪くないかな」

僕は思わずそう呟いた。


リビングのソファに座り、僕はキッチンにいる姉さんと恵理の様子を眺めていた。恵理が海美姉さんに料理を教えている。レシピ通りに作れば大丈夫だと、姉さんを励ましているようだった。

「先輩、まずはジャガイモの芽をちゃんと取らないとダメですよ」

恵理の甲高い声が聞こえてくる。海美姉さんは、ジャガイモの芽を取らずにそのまま包丁を入れようとしていたらしい。僕は思わず目を覆いたくなった。

今度は玉ねぎを切り始めた姉さんから、すすり泣く声が聞こえてきた。

「玉ねぎって、本当に目が痛くなるのね……うぅ、この玉ねぎ、私が泣いてるから、きっと美味しくなるわよね……?」

そう言って、姉さんは理沙が持ってきていた味の素を手に取った。玉ねぎに直接振りかけようとする姉さんに、恵理が悲鳴のような声を上げた。

「せ、先輩! それ、泣き止む薬じゃないですから!」

恵理の必死なツッコミに、姉さんはキョトンとした顔をしていた。

そして、肉と野菜を鍋に入れ、煮込みを始めた姉さん。しかし、いつまでたっても灰汁を取ろうとしない。

「先輩!! 灰汁は取らないとダメですよ!」

と恵理が注意するも、姉さんは首を傾げるばかりだ。

「え、灰汁って、せっかくのお肉のうま味なんでしょ? これを取っちゃったら、カレーが美味しくなくなるじゃない!」

姉さんのトンデモ理論に、僕は頭を抱えた。だが、姉さんの迷走は止まらなかった。

「もう! 恵理。料理というものはね、愛と勇気と友情さえあれば、何とかなるものなのよ!」

その言葉を聞いた瞬間、僕は全身の血の気が引くのを感じた。ああ、ダメだ。この人は根本的なところから間違っている。

僕はテーブルの上に置いてあったバファリンに手を伸ばした。頭痛がとても痛い。こんな姉さんとどう向き合えばいいんだ。

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