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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第9章 俺、料理を手伝います
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俺、料理を手伝います1 ~陸玖の苦悩~

前半は陸玖目線で、後半は怜奈目線で、物語が進みます。

「陸玖、できたわよー」

二階の自室で写真を整理していた僕を呼ぶ声に、僕は慌てて階段を駆け下りた。姉さん、いや、海美姉さんの夕食を知らせる声。それは同時に、僕にとって戦いのゴングを意味する。

キッチンからは、すでに焦げ臭いにおいと、何かが腐ったような、得体の知れない臭いが入り混じった独特の香りが漂っていた。海美姉さんは料理が苦手だ。それはもう、苦手という言葉では片付けられないレベルである。

リビングに入ると、テーブルの上には、僕らの母親が昔使っていた、どこかレトロな食器が並んでいた。そして、その中央には、黒ずんだ物体が山盛りになっている。姉さんが「できた」と胸を張るその物体は、とても食べ物には見えなかった。

「今日の夕飯は豚肉の野菜炒めよ」

そう得意げに言う姉さん。いや、姉さん。これは豚肉の野菜炒めじゃない。何かの生き物の炭化物だ。色、におい、そして不気味な光沢。すべてが僕の食欲を根こそぎ奪っていく。

「陸玖、早く食べなさい。冷めちゃうわよ」

姉さんに促され、僕は震える手で箸を伸ばした。覚悟を決めて、ほんの一切れ、口の中に入れる。その瞬間、僕の舌の上に、焦げた苦味と、何かの酸味が爆発した。胃の奥からこみ上げてくる吐き気に、僕は慌てて口を押さえた。姉さんは、そんな僕の様子を見て、不思議そうに首を傾げている。

「な、何よ。レシピ通りに作ったのに」

そう言う姉さんの目に、悪気は一切ない。それが、僕にとって一番の恐怖だった。

「ご、ごめん、姉さん。ちょっと、自分で作るよ」

僕は立ち上がり、キッチンへと向かった。冷蔵庫を開けて、姉さんが使ったであろう豚バラと野菜を取り出す。フライパンを温め、油をひき、豚バラ肉を炒める。ジュージューと食欲をそそる音と香りが広がり、野菜を加えてさらに炒める。醤油とみりんを回しかけ、最後に少量のコショウを振って完成だ。

「はい、姉さん」

姉さんの前に、僕の作った豚バラの野菜炒めを差し出した。姉さんは、恐る恐るそれを口にする。そして、その瞳は驚きに見開かれた。

「おいしい……! これが、本当の豚肉の野菜炒め……」

「まあ、そうだよ」

姉さんは、じっと僕の料理を見つめている。その表情は、悔しさとも、羨ましさとも違う、何かを悟ったような真剣な眼差しだった。

「陸玖、私、もっと料理が上手になりたい」

姉さんの決意に満ちた声が、台所に響いた。


***


昼休み、屋上につながる階段の踊り場は、私たちにとっての定位置だ。今日は陸玖が、海美先輩の料理について頭を悩ませていた。

「というわけで、うちの姉さん、本当に料理が壊滅的でさ……」

昼休み、陸玖はそう言って、昨日作ったという野菜炒めの写真を私たちに見せた。写真に写っていたのは、明らかに炭になった豚肉と、原型を留めていない野菜の残骸。それを見た恵理は、耐えきれずに吹き出した。

「ふふふっ、ひぃっ、くくく、陸玖くんのお姉さんって、そんなに料理が下手なんだ! それって、もはや芸術の域じゃない!?」

「笑いごとじゃないって」

涙を流しながら笑う恵理に、陸玖は困った顔で返した。陸玖の真剣な悩みに、私はどう答えるべきか迷った。料理の腕前? そんなもの、私には縁遠い話だ。

「私も、正直あまり料理はしないかな……」

そう言うと、陸玖が不思議そうな顔で私を見る。

「怜奈って、料理しないの?」

「うん。前世じゃ、外食かコンビニ弁当ばっかりだったし……」

しまった。口が滑った。転生したばかりの頃は、この手の失言には気をつけていたのに、すっかり元の生活に慣れてしまったせいで油断していた。

「えっ、前世? 怜奈、何言って……」

陸玖が言葉の続きを口にしようとした瞬間、恵理が私の口を両手で塞いだ。

「あああ! もう怜奈ったら、勉強と部活で疲れているんだよ! ねー?!」

恵理の渾身の誤魔化しに、陸玖は「そうなんだ……」と納得してくれたようだった。恵理に口を塞がれたまま、私は心の中でため息をつく。転生者であることをカミングアウトするには、まだ早すぎる。

「とにかく、私も料理は得意じゃないけど、もしよかったら力になるよ」

恵理が何とかそう伝えると、陸玖は「ありがとう、恵理さん!」と顔を輝かせた。


「じゃあ早速、今夜お邪魔していいかな?」

「もちろん!」

どうやら恵理は、陸玖と海美先輩の夕食の手伝いにノリノリだ。恵理の提案に、陸玖は嬉しそうに答えた。

「じゃあ、怜奈も一緒にね!」

「ゑっ?!」

恵理の言葉に、私は思わず声を漏らした。陸玖の家に行く? それは絶対に嫌だ。陸玖は、体操部の練習中、私のレオタード姿を勝手に激写している盗撮魔だ。私にとっては恐怖の対象でしかない。私は反射的に首を横に振った。

「え、ちょっと待ってよ恵理。私、心の準備が……」

しかし、恵理は私の言葉を無視して、陸玖にこう言った。

「陸玖く~ん、もし怜奈が言うことを聞かなかったら、今日も激写していいよ」

恵理の悪魔のような囁きに、陸玖の顔がにやける。陸玖は嬉しそうに「わかった!」と答えた。

「ちょっ、恵理!」

私は必死で恵理に訴えかけるが、恵理はいたずらっぽく笑うだけだった。陸玖は私の様子を見て、慌ててフォローに入った。

「わ、わかった! わかったから! 今日は絶対に激写しない! 約束するから!」

陸玖の必死な誓いに、私はため息をついた。確かに、激写されるのは嫌だ。でも、陸玖の家に行くのは気が進まないが、激写されるよりはマシだ。私は渋々、陸玖の家に行くことを承諾した。

「わかったわ。今日は激写しないっていうのが条件だからね」

そう言うと、陸玖は「やったー!」と叫び、まるで子犬のように喜んだ。恵理はそんな陸玖と私を見て、満足そうに微笑んでいた。

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