俺、思い出を見つけました10 ~合宿の終わり~
ここでは、恵理視点で物語が進みます。
怜奈の記憶の通り、その学校は、残された数少ない生徒の卒業をきっかけに、静かにその歴史に幕を閉じ、廃校となっていた。人々に忘れ去られ、森の中にひっそりと佇むその姿は、怜奈が再び訪れる日まで、ずっとそこにあり続けたのだ。
しかし、怜奈がその廃校を訪れてから数日後、その小さな廃校に、ついに取り壊しの決定が下された。長い間、人知れず存在し続けてきた建物は、もうその役目を終えることになったのだ。数ヶ月後には、そこにあった校舎も、校庭も、すべてが取り払われ、かつての面影は完全に消え去り、更地となっていることだろう。
合宿最終日。全ての練習も終わり、私たちは最寄りの駅までたどり着いた。疲労困憊だけど、ようやく帰れるという安堵感でいっぱいだ。顧問の先生の取り計らいで、帰りの電車は特急電車に乗れることになった。
水泳部の連中は、それを聞いた途端、まるで遠足に来た小学生のようにウキウキしている。きっと体操部のメンバーも同じような気分だろう。
そんな中で、陸玖だけは、茫然自失としたまま、ぽつんと立っていた。海美先輩が、そんな弟の背中をポンポンと叩いて励ましているような様子だ。ふふ、陸玖には悪いけど、私も恵理も今回のことは陸玖に感謝してるからね。
「恵理!」
怜奈が私のほうを見て呼びかけていた。怜奈の表情は、どこか晴れ晴れしているように見えた。
「本当に、ありがとう!」
私はただ、笑顔で応えるだけだった。でも本当によかった。あの夜、一緒に廃校に行ったことで、怜奈の心にずっと引っかかっていたものが取れたみたいだ。
特急電車に乗り込むと、みんなあっという間に夢の中へと落ちていった。怜奈も例外ではなく、私の隣でぐっすりと眠っている。みんな、本当に疲れていたんだろうな。
私は一人、車窓を流れる景色をぼんやりと眺めていた。都会のビル群が少しずつ近づいてくる。そんな景色を見ていると、ふと、ある考えが頭をよぎった。
怜奈は前世の思い出を見つけた。大切な場所と、大切な人との再会を果たした。でも、私には、俺にはそんな思い出があるのだろうか? 宗教とそれに没頭したクズ両親のことや、ベランダから墜落したことぐらいしか思い出せず、それ以外には、俺の中では曖昧なままだ。前世の自分がどんな人生を送り、どんな心残りを抱えていたのか、ほとんど思い出せない。
このまま、何も思い出せないままでいいのだろうか。怜奈のように、俺もいつか、そんな大切な記憶を見つけることができるのだろうか。
そんな憂鬱な気分のまま、俺はただ、車窓を流れる景色を眺めることしかできなかった。
俺、思い出を見つけました 終




