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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第8章 俺、思い出を見つけました
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俺、思い出を見つけました9 ~ありがとう、先生~

ホテルを出ると、私たちは足早に、昨日訪れたあの大きな森林の中へと入っていった。雨は小降りになっていたけれど、地面はぬかるんでいて、足元が滑りやすい。懐中電灯の光が、行く先をぼんやりと照らす。


恵理と私は、懐中電灯の細い光を頼りに、雨上がりの森林を突き進んだ。足元はぬかるみ、滑りそうになるたびに恵理が私の腕を掴んでくれる。途中、何度か道に迷いそうになったけれど、なんとか例の廃校へとたどり着くことができた。私にとっては、ここまで来るのがとてつもなく長く感じられた。まるで、何十年もの時を越えてきたかのように。

幸いなことに、廃校にたどり着いた頃には、雨はすっかり止んでいた。私は、目の前の校門をくぐり、校舎へ足を踏み入れようとした。

「怜奈、くれぐれも注意しろよ」

恵理が私の背中に、心配そうな声をかけた。彼女の声は男性口調だが、少し震えている。

校舎の中は、ひんやりとしていて、独特の匂いがした。埃と、古くなった木の匂い。私たちの足音が、静まり返った廊下に響く。

「おい、幽霊でも出るんじゃねぇか?」

恵理は、怖がっている様子だ。私の腕にしがみつく力が、どんどん強くなる。

けれど、私にとってここは、恐怖を感じる場所ではなかった。むしろ、足を踏み入れるごとに、懐かしさと、何とも言えない心地よさが込み上げてくる。まるで、長い旅から帰ってきたような感覚だ。

私は、一つひとつの教室を覗いていった。ガランとした教室の中に、かつての賑やかな笑い声が聞こえるような気がした。ここで友達と給食を食べたな、あの席で授業中に居眠りしたな、なんて、前世の頃の楽しい思い出が次々とよみがえってくる。

やがて、私たちは階段を上り、2階へと上がっていった。2階にたどり着くと、廊下の奥から、ぼんやりと青白い光が立ち込めている場所があった。恵理は、その光景にさらに恐怖を感じたようで、私の腕にしがみついたまま、もう一歩も動こうとしない。

けれど、私にはその光が何を示すのか、すぐに分かった。私は、思い出したかのように速足でその光の場所へと向かっていった。

光のある場所は、私たちが前世で最後に過ごした、あの教室だった。

青白い光に導かれるように、私は恵理と共に教室のドアを開けた。そこには、私の想像通りの人物が立っていた。紛れもない、担任の校長先生だ。先生は、夢の中で見た時と同じように、優しい眼差しで私を見つめ、手招きをしている。

「おい怜奈、待てよ! やっぱり幽霊なんじゃ……!」

恵理が恐怖に震えながら、私の腕を強く掴んで引き止めようとした。けれど、もう私には恵理の声も、恐怖も、何も届かなかった。私の視界には、先生の姿しか映っていなかった。私は恵理の制止を振り切り、先生のもとへとまっすぐ向かっていった。

先生は、私が近づいても何も言わず、ただ優しく微笑んでいる。そして、持っていたアルバムのようなものを、そっと私に手渡してくれた。その手のひらは、温かかった。先生は、私にそれを見せたことのない、満ち足りたような微笑みを見せると、ゆっくりと、光の中に溶けるように消えていった。

先生の姿が完全に消え去った後も、私はしばらくその場に立ち尽くしていた。そして、手に残されたアルバムのようなものを、震える手で開いた。

そこに書かれていたのは、まぎれもない「卒業文集」の文字だった。

(ああ、先生……。)

あの時受け取ることのできなかった卒業文集を、先生が私に渡したかったから、ずっとここにいたのだろうか。だから、成仏できずに、この場所に留まっていたのだろうか。

私は、一ページ、また一ページと、ゆっくりと文集に目を通していく。そこには、幼かった私たちの拙い作文や、将来の夢、そして友達との思い出がぎっしりと詰まっていた。一枚一枚めくるたびに、鮮やかな記憶が蘇ってくる。あの頃の笑い声や、教室の匂いまでが、まるでそこにあるかのように感じられた。

隣では、恵理がまだ恐怖心で震えている。

「おい怜奈ぁ、もうそろそろ、戻ろうぜ……?」

恵理の懇願するような声が聞こえたけれど、私には何も返すことができなかった。卒業文集を強く胸に抱きしめると、私の目から、止めどなく涙が溢れ出した。ずっと、ずっと欲しかったもの。失われたと思っていた記憶のピースが、今、完全に埋められた。

嗚咽を漏らしながら、私は心の中で、そして声に出して、何度も繰り返した。

「ありがとう……ありがとう、先生……」

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