いじめ事件7 ~転生者同士の邂逅~
このくそったれが! 恵理に邪魔され、さらに腹パンまでされた俺は、怒りが収まらなかった。せっかく田岸の奴らに復讐するチャンスだったのに。あいつのせいで、全て台無しだ。
翌日、俺は教室で自習している恵理を見つけた。彼女は、まるで昨日の屋上の出来事などなかったかのように、俺に話しかけてきた。
「あ、怜奈さ~ん、ちょっと教えてくれる?」
恵理は、手を合わせて頼み込むように困ったような顔で言った。
「確率の問題が大の苦手で、どうしても解けないのがあるの。」
恵理は、数学の教科書を指さしながら頼み込んだ。
俺は、そんな恵理の態度に腹を立てながらも、怜奈の記憶にある数学の知識が蘇ってきた。怜奈は数学が得意だった。そして、転生前の俺も、数学は得意な方だった。
「…どれ?」
俺は、恵理のノートを覗き込んだ。
恵理は、俺が数学を教え始めた途端、目を輝かせた。俺は、ついつい詳しく、丁寧に解答を教えてしまった。
「ここは、こうやって…」
俺は、転生前の俺がよく使っていた、少し専門的な用語を使って説明していた。恵理は、俺の言葉を聞きながら、真剣な表情で頷いていた。
「わあ、ありがとう。分かったよ。」
俺が説明を終えたとき、恵理は、とても晴れ晴れとした表情をしていた。
「いや、違う! 違う、そうじゃない!」
まんまと恵理の口車に乗せられたような感じがして、俺はとっさに叫んでしまった。
「君を逃がせない? 愛は渡せない?」
恵理の口から出てきたのは、あのネタにもなった歌の歌詞の続きだった。そして恵理は、突然、にこやかな表情を消し、真剣な眼差しで俺を見つめた。
「怜奈さん……お前、転生者だろ」
恵理の言葉に、俺は息をのんだ。なぜ、恵理がそんなことを知っているんだ?
「……何を言ってるの?」
俺はとぼけようとしたが、恵理は冷めた目で俺を見据えていた。
「さっきの説明、専門的すぎんだよ。それに、お前の話し方、なんか違和感あったし」
そして、恵理はこれまでの清純な口調とは打って変わって、男性口調で話し始めた。
「安心しろ。俺も、お前と同じだ。転生してきたんだよ」
恵理の言葉に、俺は戸惑いを隠せなかった。恵理も転生者? しかも、男?
「お前、もしかして、あの屋上で俺を止めたのも……」
俺がそう尋ねると、恵理はニヤリと笑った。
「ああ。お前が田岸のヤツらに手を出したら、後々面倒なことになると思ったからな」
恵理は、転生前の俺と同じように、この世界で生きている。そして、俺の正体を見抜いていた。
俺は、恵理の存在に驚きながらも、この世界で初めて、同じ境遇の仲間に出会えたことに、少しだけ安堵した。




