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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第8章 俺、思い出を見つけました
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俺、思い出を見つけました7 ~恵理の策~

午後の練習が始まった。私は床運動の練習に打ち込もうとするけれど、どうにも集中できない。昨夜からの出来事が頭の中をぐるぐると巡っている。そんな私の様子を、咲良先輩が見逃すはずもなかった。

「怜奈! 何ボーっとしとるんじゃ! そんなんじゃ、いつまでたっても上手にならんぞ!」

いつもの広島弁で怒鳴る咲良先輩の声に、ハッと我に返る。私は慌てて体勢を立て直したけれど、やはり頭の中はモヤモヤとしたままだ。

「……何かあったんか、怜奈。あんた、今日の朝から様子がおかしいじゃろう」

咲良先輩は私の異変に気づいていたらしい。心配そうに眉を下げて私を見つめる先輩に、私は思わず本音をこぼしてしまった。

「陸玖のヤツが気になって仕方ないんです……」

そう、休憩中からずっと、陸玖のシャッター音が気になって仕方ない。私が演技をするたびに、「カシャッ!」「カシャッ!」と聞こえてくるたびに、恥ずかしさで集中力が途切れてしまうのだ。

咲良先輩は、私の視線の先を追って陸玖のほうを見ると、ため息をついた。

「ああ、陸玖のことか。そりゃあ、すまんな。荷物運びで連れてこさせたのは失敗じゃったかもしれん」

どうやら咲良先輩も、陸玖の行動には手を焼いているらしい。

「よし、わかった。休憩時間に、陸玖を説得させてみるわ。もう少し真面目に部活に取り組むようにな」

咲良先輩の力強い言葉に、私は少しだけホッとした。これで陸玖のストーカー行為が収まってくれるなら、それに越したことはない。

実はこれ、恵理の策の一つだった。私が昨夜の出来事で思い詰めている心理状況を利用して、陸玖のストーカー行為のせいで練習に身が入らないという嘘を顧問の先生に吹き込むことで、先生の注意を陸玖に向けさせるというものだ。そうすれば、私が森林に入った件は追及されずに済むかもしれないと。

正直、こんな嘘が通用するのかという実感がわかないけれど、陸玖のストーカー行為が止まるのなら、安いものだ。私はそう思い直し、再び練習へと戻っていった。


この日の練習も、へとへとになるまで続いた。体育館を出ると、しとしとと雨が降り始めていた。空は鉛色で、いよいよ本格的な雨になりそうだ。

バスに乗り込むと、水泳部の男子部員たちが大騒ぎしているのが聞こえてきた。何事かと耳を澄ますと、どうやら陸玖のカメラが壊れてしまったらしい。しかも、陸玖が撮りためていた体操部の練習写真が、ごっそり消えてしまったという。

「うわーっ! マジかよー!」

「俺たちの写真がー!」

男子たちの悲鳴がバス中に響き渡り、陸玖は今にも泣き出しそうな顔でカメラを抱え込んでいる。普段のストーカー行為にはうんざりしている私だけど、さすがに少しだけ可哀想に思えてきた。

すると、隣に座っていた恵理が、私の耳元にそっと囁いてきた。

「ふふ、あれね、実は私の策なの」

恵理の言葉に、私は目を見開いた。まさか、陸玖のカメラが壊れたのも、写真が消えたのも、恵理の仕業だったとは!

「ただ、撮った画像を全部消去した上で、日付と設定を初期化しただけなんだけどね。昨日、怜奈たちが森林に入っていく様子が神秘的だったから、きっと陸玖も撮ろうとしたんだろうなって思って。しかも、陸玖のカメラ、そろそろバッテリーが切れそうだったのよ」

恵理は悪びれることなく、にやりと笑っている。陸玖には本当に悪いけど、私のストーカー行為が止まるなら、これくらいは安いものだと、恵理は言いたげな顔をしていた。


ホテルに到着しても、雨足が弱まる気配はなかった。それどころか、窓を叩きつける雨粒の音がどんどん強くなっている。今夜、またあの場所に行こうと思っていたのに、これでは行けそうにない。

「明日にしよう」

恵理が私の気持ちを察したようにそう言った。雨音を聞きながら、私はただ頷くしかなかった。

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