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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第8章 俺、思い出を見つけました
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俺、思い出を見つけました5 ~思い出の廃校~

夕食後のスケジュールは、嬉しいことに自由行動だった。ホテルに着いてすぐに売店に行ってみたけれど、残念ながらもう閉まっている。近くにあるのは、少し歩いたところにあるローソンだけ。他の部員たちは、そこへお菓子や飲み物を買いに繰り出していった。

けれど、私はローソンには行かなかった。どうしても確かめたいことがあったのだ。私はフロントで懐中電灯を借りると、一人でホテルの近くにあった大きな森林の中へと足を踏み入れた。


鬱蒼と茂る木々の間を、懐中電灯の明かりを頼りに進んでいく。足元は落ち葉と小枝で覆われていて、踏みしめるたびにガサガサと音がする。まるで、何かの探検をしている気分だ。

しばらく歩くと、暗闇の中に奇妙な影が浮かび上がってきた。近づいてみると、それは木で作られた遊具の残骸だった。滑り台の朽ちた土台、ブランコの壊れた支柱、シーソーの傾いた板。あちこちに遊具が点在しているけれど、そのほとんどが朽ち果てて、自然の中に溶け込もうとしている。どうやら、この森林の中には、かつて公園があったらしい。

その光景を見て、私の前世の記憶が鮮明に蘇ってきた。そうだ、間違いなくここには公園があった。子供の頃、よく友達と遊びに来ていた公園だ。この既視感は、気のせいじゃなかった。

さらに奥へと進むと、懐中電灯の光が雑草に覆われた大きな建物を捉えた。建物の前には、古びたけれど見覚えのある校門らしき門が立っている。

「やっぱり……」

私の前世の記憶の通り、ここには学校があったのだ。かつて私が通っていた、あの小学校が。

懐かしさと、そしてこの場所と再会できた驚きで、私の体は震えが止まらなかった。これは夢じゃない。本当に私は、この場所に、この時代に、転生したんだ。


懐かしさと感動で震える私に、背後から突然声がかけられた。

「おい、こんなところで何やってんだ?」

低い、けれど聞き慣れた男らしい声に、私は「ひゃあっ!」と情けない声を上げて飛び上がった。振り向くと、そこに立っていたのは、見慣れた恵理の顔だった。ただ、いつもの可愛らしい声とは違い、その声色は完全に男性口調になっている。

「え、恵理!?」

「お前がフラフラと林の中に入っていくから、心配になってついてきてやったんだよ」

恵理は呆れたように肩をすくめた。私は、まさか恵理がついてくるとは思っていなかったので、心底驚いた。

「どうしたんだよ、こんな廃墟で。なんか見つけたのか?」

恵理の視線の先には、私がかつて通っていた小学校の校舎が建っていた。私は、恵理に促されるように、ゆっくりと話し始めた。

「うん……私、前世の頃、この辺りに住んでたんだ。この建物は、私が通っていた小学校で……」

言葉を選びながら、ぽつりぽつりと話し出す。前世の私が通っていた小学校は、本当に小さな学校だった。全校生徒合わせても、たった数人しかいなかった。でも、その少ない友達と、毎日が本当に楽しかった。秘密基地を作ったり、この裏山で遊んだり、色々な思い出が詰まっている。

「卒業する直前、私、転校することになっちゃって……」

私は、卒業文集を受け取るのをすごく楽しみにしていたのに、それは叶わなかった。私が転校した後、残された友達が卒業したのをきっかけに、この小学校は廃校になったと聞いていた。

「みんなと一緒に、卒業したかったなぁ……」

そう呟くと、私の目から一筋の涙がこぼれ落ちた。溢れ出す感情を止めることができず、私はただ、その場で立ち尽くしていた。

恵理は、そんな私の言葉を、ただ黙って聞いてくれた。何も言わず、ただ私のそばにいてくれるその優しさが、今の私には何よりも嬉しかった。


その時、恵理のスマホから軽快なアラーム音が鳴り響いた。門限まであと10分だということを告げるアラーム音だ。

「やっば! 怜奈、急ごう! 門限に遅れちゃう!」

恵理はいつもの女性口調に戻り、慌てた様子で私の腕を引いた。私は頷き、恵理と一緒に来た道を急いで引き返し、ホテルへと戻っていった。


ホテルに戻り、私は布団の中に潜り込んだ。

他の部員たちは、部屋の電気を消してからもプチプラコスメの話題で盛り上がっていた。

「やっぱりキャンメイクのチークは発色がいいよね!」

「セザンヌのアイシャドウも捨てがたい!」

キャンメイク派とセザンヌ派が、お互いの主張をぶつけ合っている。

普段なら私も興味津々で話に加わるんだろうけど、今はなんだか、細かい内容までは頭に入ってこなかった。私の頭の中を占めていたのは、更衣室で出会った老人と、夢の中で見たあの老人のこと。

あの人は一体誰なんだろう?なぜ、私に話しかけるように微笑んだんだろう?そして、なぜ夢の中にまで出てきたのだろうか。前世の記憶をたどってみても、あの老人の姿が誰と結びつくのか、どうしても思い出せない。

モヤモヤとした気持ちを抱えながら、私は次第にうとうとし始めた。コスメ談義に花を咲かせているみんなの声が遠ざかっていき、私の意識はゆっくりと、深い眠りの中へと沈んでいった。


布団の中でうとうとしていた私は、再び夢の世界へと引きずり込まれた。

暗闇の中にいる。どこからともなく、前世の名前で私を呼ぶ声が聞こえてくる。「〇〇!」――その声は、私を呼んでいるようにも、私自身を表しているようにも聞こえた。声の主を探そうと、辺りを見回す。

すると、暗闇の中で何かにぶつかった。目の前には、見慣れた作業着を着た老人が立っていた。体育館の更衣室で出会った、あの老人だ。

気がつけば、私は先ほど訪れた廃校の校門の前に立っていた。老人は、私に向かって優しい目で微笑み、「待っていたよ」と、口の動きだけでそう呟いたように見えた。その手には、まるで古いアルバムのような、一冊の本が握られている。

私は老人に近づこうと一歩踏み出した。しかし、老人はそれに応じるように、お茶目な表情でニヤリと笑うと、校舎の奥へと逃げ込んでいく。

「待って!」

私は思わず叫び、老人の後を追って校舎の中へ飛び込んだ。

校舎の中は、廊下も教室も、どこもかしこも懐かしい風景が広がっている。そして、そこには前世の友達が、昔と同じように無邪気に遊んでいた。みんな、私のことを気にすることなく、ただ笑い声を上げている。

老人は、教室の一室へと入っていった。私はその教室を覗き込む。そこには、老人の他に大人の姿はどこにも見当たらなかった。子供たちだけが、楽しそうに遊んでいる。その光景を見た瞬間、私の頭の中で何かが閃いた。

そうだ、思い出した。

あの老人は、私たちが小学生だった時の先生だ。子供が少ないこの学校の、唯一の大人だった。

その正体を思い出した途端、夢が一気に鮮明になり、そして、そこでぷつりと途切れた。


ハッと目が覚めた。辺りはまだ暗く、窓の外からは微かに虫の声が聞こえてくる。夢だった。でも、夢の中で思い出せた老人の正体。そして、あの懐かしい学校の風景。

私は布団の中で、自分の心がざわめくような感じが確かにしているのを感じていた。ただの夢だと言い聞かせても、あの老人の存在が、私の心の中で大きな意味を持ち始めているような気がした。

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