俺、思い出を見つけました1 ~合宿の始まり~
ああ、着いた。見慣れたはずのこの駅のホームに降り立つと、いつもより少しだけ胸が高鳴る。今日から4日間、体操部の合宿練習が始まるんだ。もっとも、今年は色々とごたごたがあったらしくて、当初は別々の日程だった水泳部との合同合宿になったんだけど。ホテルの手配やら体育館の予約やら、先生たちも大変だったみたい。まさか、空いている日程が綺麗に重なっちゃうなんて、本当に偶然ってすごい。
深呼吸を一つ。肺いっぱいに広がる空気は、コンクリートジャングルの匂いとは全然違う。草の匂いと、土の匂いと、ほんの少しだけ潮の香りが混じったような、そんな懐かしい香りがする。ああ、美味しい。都会で毎日吸っている空気とは、本当に別物だ。
隣に立つ恵理は、私の腕にぎゅっとしがみついてくる。
「怜奈と一緒の合宿、すっごく楽しみだったんだ!」
と、キラキラした瞳で私を見上げる。うん、私も恵理と一緒なら、賑やかで楽しい合宿になりそうだなって思ってる。
……ただ一人、陸玖が一緒に来ているという点を除けば、だけど。
「ねえ、怜奈ってばさ、本当は陸玖のこと、結構気になってるんじゃないの?」
恵理は、私の顔を覗き込みながら、ニヤニヤした顔でそう言ってきた。全くもう、この子はどこまで人のことをからかえば気が済むんだろうか。
「まさか! 全然気になってないから!」
私は、全力で否定する。そんなこと、あるはずないじゃないか。ストーカーというか、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、熱心にアプローチしてくる男の子、それ以上でもそれ以下でもない。
「こらー! そこの一年生! ぼーっとしてないで、荷物運ぶの手伝ってー!」
不機嫌な私の声にかき消されるように、後ろから麻衣子先輩の大きな声が飛んできた。しまった、考え事をしていたら、すっかり先輩たちの存在を忘れていた。
駅前の駐車場には、もう既に大型のバスが停車している。確か、今日はうちの高校だけじゃなくて、いくつかの学校の部活が合同でこのホテルを使うんだったかな。だから、バスも何台か停まっている。
「行こう、恵理」
私はそう言って、恵理と一緒にバスの方へ歩き出した。
歩きながら、ふと駅前の小さな町の様子に目をやる。昔ながらの小さな商店街、古びたけれど手入れの行き届いた家々、そしてどこまでも広がる田んぼ。ああ、なんだかすごく懐かしい。初めて来た場所のはずなのに、どうしてこんな気持ちになるんだろう。前世の記憶、なんて馬鹿げたことを一瞬考えたけれど、すぐに頭を振って打ち消した。
「怜奈ー! 早く早く!」
恵理の明るい声にハッと我に返る。いけない、またぼーっとしていた。私は慌てて、恵理の待つバスへと足を速めた。賑やかな合宿が、いよいよ始まる。どんな4日間になるかな。少しの不安と、それ以上の期待が、私の胸の中で渦巻いていた。




