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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第7章 俺、お姉ちゃんになりました
72/100

俺、お姉ちゃんになりました8 ~俺、理沙を守りました~

前半は理沙目線で、後半は怜奈目線で、物語が進みます。

怜奈お姉ちゃんは、私が両親のことを話したら、なんだか顔色が悪くなっちゃった。私が陸玖くんとお父さん、怜奈お姉ちゃんとお母さんになって、一緒に夕飯を食べたいって言ったら、ものすごい勢いで却下されちゃったし……。私、そんなに変なこと言ったかな?

「ちょっと、理沙。私、気分悪いからトイレ行ってくる。あんたはここで待ってなさいよ」

怜奈お姉ちゃんはそう言うと、顔を真っ青にして、少し離れたところにあるトイレの方へ急いで行ってしまった。私は、怜奈お姉ちゃんが戻ってくるまで、改札機の前で待つことにした。

暇だなぁ、と思って、最近話題のドラクエのアプリを開いた。


夢中になって遊んでいると、なんだか変な視線を感じた。ふと顔を上げると、隣に中年の男性が立っていた。ただ、私の隣に。男性はスマホで競馬のアプリを開いているみたいだったけど、なんか、みすぼらしい格好をしてるし、汗くさいような、何日もお風呂に入っていないようなきつい臭いがする。

「う……」

私は思わず、その男性から少し距離を取ろうとした。すると、男性も私が遠ざかるのを感じたのか、また私にじりじりと近づいてくる。ゾクッとした。なんだか、怖い。

私はさらに一歩下がった。すると男性もまた一歩、近づいてくる。この人、変だ。私はだんだん、恐怖を感じ始めた。逃げ出したい。早く怜奈お姉ちゃん、戻ってきて!

たまらずその場を逃げ出そうとしたその時、ガッと腕を強く掴まれた。

「ひっ……!」

男性の指が、私の腕に食い込む。痛い。怖い。

「怜奈お姉ちゃーん!!」

私は、ほとんど反射的に、怜奈お姉ちゃんの名前を叫んだ。


***


トイレから出た後、私はケーキを買っていった。せっかくだし、今夜、デザートで一緒に食べようと思ったのだ。

ケーキを買った私は、急いで理沙が待っている改札の方へ向かう。おうちに帰って、一緒に美味しいケーキを食べながらおしゃべりしようか。そんなことを考えていた矢先、私の目に飛び込んできたのは、理沙が中年の男性に腕を掴まれ、怯えている姿だった。

「理沙!」

私は叫びながら、理沙のもとへ駆け寄った。怒りが全身を駆け巡る。なんてことだ。この前世でも今世でも、大切な人を傷つけようとする奴がいるなんて。

その瞬間、私の頭の中に、あるコマンドが閃いた。


《623+P》


それは、前世で何百回、何千回と入力した、格闘ゲームにおける必殺技のコマンド――昇竜拳だ。

中年男性の懐に一気に飛び込み、下から突き上げるように拳を繰り出す。私の拳は、まるでゲームのキャラクターになったかのように、正確に男性の顎を捉えた。

「ぐあっ!」

男性は呻き声を上げ、私の昇竜拳に吹き飛ばされた。まるで漫画のように、宙を舞い、地面に叩きつけられる。周りの人々が驚いて振り返るのが見えたが、今はそんなことを気にしている暇はない。

「理沙!」

私は倒れている男性を尻目に、理沙に駆け寄った。理沙は、私を見るなり、泣きながら私の胸に飛び込んできた。

「お姉ちゃーん!!」

小さな体が震えている。私は理沙を強く抱きしめ、背中を優しく撫でた。

「大丈夫、もう大丈夫だから。私がいるから。」

ふと、手に持っていた紙袋に目をやると、中に入っていたはずのケーキは、先ほどの戦闘の衝撃でぐしゃぐしゃになってしまっていた。せっかく理沙と食べようと思って買ったのに、これじゃあ台無しだ。

「ケーキ、ぐちゃぐちゃになっちゃったね……ごめん」

私が申し訳なさそうに言うと、理沙は顔を上げて、涙でぐしゃぐしゃになった顔で、でも満面の笑顔を見せた。

「ううん、いいの! 私、怜奈お姉ちゃんと一緒に、お家で夕飯食べれるだけで、もう十分嬉しいから!」

その言葉に、私の胸は温かくなった。ケーキはぐちゃぐちゃになってしまったけれど、理沙の笑顔は何よりも甘くて、私の心を癒してくれた。この子の笑顔を守るためなら、昇竜拳の一つや二つ、いつでも繰り出してやる。私は理沙の手を強く握りしめ、家路を急いだ。


「ただいまー」

理沙と手を繋いでマンションのドアを開けると、香ばしい匂いが鼻をくすぐった。リビングに入って食卓を見ると、そこには山盛りのカキフライが置かれている。思わず歓声が漏れた。カキフライは、前世のサラリーマン時代から私の好物だった。

「お帰りなさい、怜奈、理沙ちゃん! 今日は理沙ちゃんが来てくれたから、一日遅れのごちそうよ!」

母がエプロン姿で笑顔を見せた。今日の夕飯は、理沙の歓迎会も兼ねているらしい。

食卓を囲み、温かいカキフライを頬張る。サクサクの衣の中からジュワッと広がる牡蠣の旨みがたまらない。理沙も目を輝かせてカキフライを食べている。

「ねえ、おばちゃん! 今日ね、怜奈お姉ちゃんがね、悪いおじさんをね、えいって吹っ飛ばしたんだよ! めちゃくちゃかっこよかったんだから!」

食事中、理沙が今日の駅での出来事を、身振り手振りで楽しそうに話している。私は恥ずかしくなって、思わず口元を押さえた。そんなに大声で言わなくてもいいじゃないか。

「えっ、怜奈がそんなことを……?」

母は驚いたような顔をしていた。

「いや、それはちょっと、手加減できなかったというか、ついとっさに……」

しどろもどろに言い訳する私の顔を、母はじっと見つめ、何かを思い出しているようだった。

「怜奈……あなた、本当に、人を守ろうとしたのね……」

母の目にはうっすらと涙が浮かんでいる。まさか、そんな風に感動されるとは夢にも思わなかった。私はたまらず照れくさくなって、もう一度顔を伏せた。

食事が終わり、デザートにフルーツを食べていると、母が理沙に言った。

「そうそう、理沙ちゃん、あなたの机とベッドが届いたわよ。もうお部屋に運び込んであるから、今日から自分の部屋で寝れるわね」

その言葉に、理沙は「わーい!」と声を上げて喜んだ。だが、私は少しだけ寂しいと感じてしまった。理沙と二人で過ごした一夜は、想像以上に楽しく、賑やかだったのだ。


「あのさ、理沙」

寝る前、自分の部屋へ向かう理沙を呼び止めた。

「寂しくなったらいつでも来ていいからね。隣の部屋だし」

そう言うと、理沙は少し考えてから、首を横に振った。

「ううん、迷惑かかりそうだから、遠慮しとく! ありがとう、怜奈お姉ちゃん!」

理沙はそう言って、自分の部屋へと入っていった。私はその背中を見送りながら、自分の部屋に戻る。

ベッドに横になり、天井を見上げた。理沙の笑顔が目に浮かぶ。あの子が、これからたくさんの喜びと幸せに包まれて生きていけるように。そして、いつか両親と食卓を囲むという夢が叶うように。私は静かに理沙の幸せを願いながら、深い眠りについた。

俺、お姉ちゃんになりました 終

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