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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第7章 俺、お姉ちゃんになりました
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俺、お姉ちゃんになりました7 ~理沙の夢~

理沙と手をつないで駅まで歩き、そのまま駅前の大きな本屋に立ち寄った。理沙が受験生だと知ってから、漠然と「何か買ってあげなきゃ」と思っていたのだ。

「理沙、何か欲しい参考書とかある?」

「過去問ならもう買ってあるよ!」

私が尋ねると、理沙は元気よく答えた。真面目な子だなと感心する。

「でも、私、数学が苦手で……」

理沙が少しだけ困ったように言ったので、私はすぐに数学の問題集のコーナーへ向かった。基礎からしっかり学べるような、分かりやすそうな問題集を何冊か手に取る。

「これなんかどう? 解き方も詳しく書いてあるし、苦手意識もなくなるんじゃないかな」

私が選んだ問題集を理沙に見せた。

「わぁ、ありがとう!」

理沙は嬉しそうに頷いた。

私もついでに、自分の参考書を探すことにした。この現世での私の目標は、東大に入ることだ。前世では会社員だったから、受験なんて遥か昔の話だけど、今世はせっかく女子高校生になったんだから、思いっきり勉強も楽しみたい。ただ、唯一の弱点は英語だ。数学は得意だけど、英語だけはなぜか、全然頭に入ってこない。

「どれがいいかなぁ……」

ずらりと並んだ英語の参考書を眺めていると、ふと、隣の本棚に目を引くものがあった。そこには、器械体操の本が置かれている。美しいフォームの写真や、技の解説が載っていて、思わず見入ってしまった。体操部に入部してはみたものの、正直まだ身体が完全に馴染んでいるわけではない。もっと上手くなりたい、そう強く思った。

「これも買っちゃおうかな」

私は迷わずその本を手に取った。

レジを済ませ、両手に袋をぶら下げて本屋を出る。隣を見ると、理沙も嬉しそうに袋を抱えていた。

「ねえ、お姉ちゃん! 一緒にお買い物できて、すごく楽しかったね!」

「うん、私もだよ。理沙のおかげで、いい買い物ができた」

互いの顔を見合わせて、私たちはにっこりと笑い合った。理沙は勉強、私は受験と部活。それぞれの目標に向かって、この夏も頑張ろう。そんな気持ちが、じんわりと心に広がっていった。


本屋を出て、買ったばかりの本を抱えて駅へと向かう。理沙は相変わらず嬉しそうで、私の顔をじっと見上げてきた。

「ねえ、怜奈お姉ちゃん。陸玖くんって、どんな人なの? 怜奈お姉ちゃんのこと、好きなの?」

理沙のストレートな質問に、私は思わず焦った。まさか、そんなことを聞かれるとは。

「な、何言ってるのよ! ただのストーカーよ、あんなの!」

私は顔を真っ赤にして全力で否定した。陸玖が私に好意を抱いているのは薄々気づいていたけれど、それを理沙に指摘されるのは妙に恥ずかしかった。

「えー? でも、なんか仲良しみたいに見えたよ? 怜奈お姉ちゃん、すごく楽しそうだったし」

理沙の言葉に、私はさらに赤面する。楽しいなんてとんでもない。あれは、ただの迷惑行為を阻止するために、私が陸玖を脅しているだけだ。

「違うってば! 全然そんなことないから!」

私はぶんぶんと首を横に振った。その時、理沙が陸玖のことを思い出したように言った。

「そういえば、陸玖くんがカメラ持ってる姿、私のお父さんに似てるんだよね」

理沙の言葉に、私は少し驚いた。

「へえ、理沙のお父さんもカメラマンなんだ」

「うん! アメリカにある新聞社で、カメラマンとして働いてるんだ。お母さんはジャーナリストで、日本全国を飛び回ってるんだよ」

理沙は少し寂しそうに、でも誇らしげに話した。理沙の両親がそんなすごい仕事をしているとは知らなかった。だから、あんなに家を空けているのか。

「私ね、将来の夢があるんだ。それはね……お父さんとお母さんと一緒に、食卓で夕飯を食べること!」

理沙は満面の笑顔で、そう宣言した。その純粋な願いに、私の胸はギュッと締め付けられた。たったそれだけのことが、この子にとっては「夢」なのだ。両親に囲まれて夕食を食べる。それは、多くの子供たちにとって当たり前の日常なのに、理沙にとっては遠い夢。

私は何も言えなかった。なんて答えたらいいのか、分からなかった。

「……きっと、叶うよ」

精一杯の言葉だった。それしか言えなかった自分が、歯がゆかった。理沙は私の言葉に満足したように、にこりと笑った。

「うん! だからね、お姉ちゃん! 陸玖くんをお父さんの代わりにして、怜奈お姉ちゃんをお母さんの代わりにして、一緒に夕飯食べたいな!」

理沙は目を輝かせて、とんでもないことを言い出した。

「却下! それだけは却下! 絶っ対に却っ下!!」

私は即座に、全力で否定した。私と陸玖が夫婦役で夕食なんて、そんな悪夢みたいな展開は絶対にありえない。

「えー! いいじゃん!」

「いくない!!」

理沙は不満そうに口を尖らせたが、私は断固として首を縦に振らなかった。

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