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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第7章 俺、お姉ちゃんになりました
70/100

俺、お姉ちゃんになりました6 ~理沙との写真~

部活動が始まると、理沙は案の定、今日も陸玖の撮影の邪魔をして楽しんでいた。陸玖がカメラを構えるたびに、理沙がひょいとレンズの前に現れてピースサインをしたり、変顔をしたりする。

「理沙ちゃん! やめて!」

陸玖がそう叫びながら、半泣きで理沙を追いかけ回していた。その光景を眺めながら、咲良先輩と麻衣子先輩もクスクスと笑っている。

「いやぁ、陸玖も大変じゃのう」

「怜奈が連れてきたんだから、自業自得よ」

先輩方の言葉に、私も思わず笑みがこぼれた。陸玖には申し訳ないけれど、理沙のおかげで、陸玖の隠し撮りから解放されたのは事実だ。それに、理沙の明るさに、部活の雰囲気も少し明るくなったような気がする。連れてきてよかったのかもしれない。

咲良先輩がストレッチをしながら、私に問いかけてきた。

「なあ怜奈、妹ができた感想はどおなんじゃ?」

「んー……悪くない、かな。最初は面倒だと思ったけど、意外と賑やかで楽しいです」

正直な気持ちだった。前世でも一人っ子だった私にとって、理沙との生活は全く新しいものだ。昨日までは想像もできなかったけれど、案外、悪くない。

「ただ、昨日の夜、理沙がうなされてたんです」

私はふと、昨夜の理沙の様子を思い出し、二人に打ち明けた。

「なんか、パジャマにしがみついて『離れないで』って呟いてたんです。ひどい夢でも見たのかな?」

理沙がどんな夢を見ていたのか、私は知らない。ただ、その時の理沙の顔は、あんなに元気な理沙からは想像できないくらい、不安そうだった。

「うなされてたって……もしかして、理沙ちゃんの家庭環境とか、何か原因があるんじゃないの?」

麻衣子先輩が真剣な顔で言った。その言葉に、私はハッとした。確かに、理沙が急にうちに来ることになったのも、何か理由があるのかもしれない。両親は、理沙がうちに来ることを、あっさりと受け入れたようだったけれど、その裏には何かあるのだろうか。

「理沙の両親……か」

私は理沙の笑顔の裏に隠された何かがあるような気がして、漠然とした不安を覚えた。


部活の練習が終わり、理沙と一緒に家路についていた。今日の理沙は、陸玖をいじり倒して満足したのか、いつもよりおとなしい。私は意を決して、昨夜の出来事を尋ねてみることにした。

「ねえ、理沙。昨日の夜、どんな夢見てたの?」

私がそう問いかけると、理沙はぴくりと肩を震わせて驚いた顔をした。無理もない。まさか私が、彼女のうめき声を聞いていたなんて、思ってもいなかっただろう。

「うなされてたみたいだったけど、何か怖い夢でも見た?」

私の言葉に、理沙は俯いてしまった。小さな声で、ぽつりぽつりと話し始めた彼女の言葉に、私は耳を傾ける。

「私……小さい頃から、お父さんとお母さんとまともに話したこと、あんまりないんだ。最近じゃ、年に一度、顔を見せるくらいで……」

理沙のお父さんは海外に出張ばかりで、お母さんも夜遅くまで仕事をしているらしい。だから、理沙はいつも一人で、両親と過ごす時間はほとんどないのだと。

「いつか、お父さんとお母さんが、私の前からいなくなっちゃうんじゃないかって、寂しくて、不安で……」

理沙の声が震えだす。その小さな背中が、まるで世界の重みを背負っているかのように見えた。

「だから、怜奈お姉ちゃんに出会えて、本当に嬉しかったんだ。本当のお姉ちゃんができたみたいで……」

理沙の言葉に、私の胸が締め付けられる。私が「転生」したこの体は、以前いじめられて自殺未遂をした過去がある。そのせいで、私も過去の人間関係を覚えていないから、理沙の気持ちを完全に理解することはできない。けれど、両親との寂しさや不安、そして私への慕情が、その小さな体から痛いほど伝わってきた。

「だから……お父さんとお母さんだけじゃなくて、怜奈お姉ちゃんまでいなくなっちゃうのが、すごく、すごく辛くて……」

そう言い終わると、理沙はポロポロと大粒の涙を流し始めた。しゃくりあげながら泣く理沙の姿を見て、私はたまらず彼女を強く抱きしめた。小さくて華奢な体が、震えている。

「大丈夫。私はどこにも行かないから。理沙を置いていったりしないから」

背中を優しく撫でながら、そう繰り返す。私の言葉が、少しでも理沙の不安を和らげてくれることを願った。この子が抱える孤独は、私が思っていたよりもずっと深かったのだ。


理沙を抱きしめ、背中を優しく撫でていると、不意にシャッター音が聞こえた。


カシャッ。


は? なに今の音?

私の背後には、案の定、陸玖が立っていた。手にはいつもの一眼レフカメラ。まさか……。

「陸玖! なんであんたがここにいんのよ!」

陸玖は、バツが悪そうに目を泳がせながら、カメラを隠そうとする。

「いや、その……たまたま、通りかかっただけで……」

「嘘ばっかり! あんた、今、私たちを撮ったでしょ!」

陸玖の焦りようから、それが事実だとすぐにわかった。理沙はまだ心の動揺が収まっていないようで、私の腕にしがみついたままだ。こんな時に、何を考えているんだ、この隠し撮り野郎は!

「いいから、あんた、ちゃんと撮りなさい!」

私は陸玖に詰め寄った。陸玖は目を丸くして、私の顔を見る。

「え? な、何をですか?」

「だから、私と理沙の写真を、正面から撮りなさいって言ってんのよ!」

陸玖はギョッとしたように口を開け、何かを言いかけようとした。しかし、私はそれを許さない。

「文句があるなら、合宿に置いていくわよ。陸玖、合宿ではあんたを同行する予定だったんでしょ? 荷物持ちとして重宝してたけど、別に代わりなんていくらでもいるんだから!」

私の言葉に、陸玖の顔が真っ青になる。合宿での隠し撮りを阻止されるのは、彼にとって死活問題なのだろう。

「わ、わかりました! 撮ります! 撮らせていただきます!」

陸玖はあっさりと引き受けた。ふん、現金な奴め。

私は理沙の手を引いて、陸玖のカメラの前に立った。理沙はまだ少し不安そうな顔をしていたけれど、私が体を寄せると、少しだけ表情が和らいだ。陸玖はプロらしく、何枚かシャッターを切っていく。

「撮れました! 後でメールで送っておきますね!」

陸玖はそう言って、早々に立ち去ろうとした。

「って、あんた、私にメールアドレス教えてないでしょ!」

私がそう叫んだが、陸玖はすでに小走りで遠ざかっていく。まったく、呆れてものが言えない。いつの間に、私のメールアドレスを手に入れたのか。きっと、麻衣子にでも聞いたのだろう。

呆れつつも、私は理沙との写真が撮れたことに安心した。理沙も、陸玖が立ち去った後、不安そうだった顔から笑顔が戻り、ほっとしたように私を見上げた。

「お姉ちゃん、ありがとう!」

理沙の笑顔に、私も自然と笑みがこぼれた。この子を守ってやる、そう強く思った。

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