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俺、女子高生になりました  作者: アガッタ
第7章 俺、お姉ちゃんになりました
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俺、お姉ちゃんになりました1 ~小さな訪問者~

「もう無理! 勘弁してくださいよ、怜奈さん、恵理さん!」

陸玖の悲鳴が、休日のショッピングセンターに響き渡る。もちろん、周りの人は誰も気にしていない。皆、思い思いに夏休み初日の買い物を楽しんでいるだけだ。陸玖の腕には、私と恵理が選んだ合宿の買い出し品がこれでもかとぶら下がっている。まるで腕がもう2本あるかのように、両手に抱えきれないほどの荷物を抱え、それでもなお私たちの後をついてくる陸玖の姿は、まるで現代の苦行僧だ。

「何言ってるのよ、陸玖。これくらいで音を上げるなんて、男としてどうなのよ?」

私は呆れたように陸玖に言う。恵理も、私の隣でニコニコしながら同意している。

「そうだよ、陸玖くん。それに、私たちは陸玖くんに感謝してるんだからね!」

「え、感謝……?」

恵理の言葉に、陸玖は眉をひそめた。陸玖の言う通り、私たちは陸玖に無理をさせている。でも、それにはきちんとした理由があるのだ。

体操部と水泳部の合同合宿が、いよいよ始まる。私と恵理は、そのための買い出しに来ていた。当然、陸玖も私たちに付き合わされているわけだが、それは彼が夏休みの補習組だからだ。成績が悪くて補習を受けている陸玖のことだから、どうせ補習に身が入らないだろうと私は踏んでいる。幸いにも(?)補習は午前中ということもあり、どうせなら、空いた午後の時間を私たちにこき使われて、少しは世の中の厳しさを知るべきだ。

「それにね、どうせ私の練習の邪魔するんでしょ」

私がそうこぼすと、恵理は苦笑いした。そう、陸玖は私がレオタードを着て練習している姿を、こっそり隠し撮りしているのだ。いくら注意してもやめてくれないどころか、隠れて撮るのがどんどん得意になっている。そのせいで、私は練習に集中できないこともしばしばあった。

もう我慢の限界! 私は陸玖にこう宣言したのだ。

「あんたがそんなに私のレオタード姿を撮りたいなら、その撮影料の代わりに、私に尽くしなさーい!!」

陸玖は不承不承といった感じで頷いたものの、その顔には不満がありありと浮かんでいた。

(なんで俺がそんなことしなきゃいけないんだ…)

内心ではそう思っているのだろう。

「いや、でも、これはさすがに……」

陸玖が何かを言いたそうに口を開くが、私たちはそれを許さない。

「「ダメったらダメ!!」」

私と恵理が、同時にビシッと指をさす。ハモりも完璧に決まった!

陸玖は観念したように肩を落とし、私と恵理の後に続く。ショッピングセンターの天井から降り注ぐ夏の陽光が、彼の丸い頭に反射してまぶしい。合宿はきっと、これ以上に波乱に満ちたものになるだろう。私はそう確信しながら、次の店へと足を向けた。


「……ところで、陸玖」

私はふと足を止め、ショッピングセンターの人混みを見回した。なんとなく、視線を感じる。気のせいだろうか、いや、違う。じっと私を見つめているような、そんな熱っぽい視線だ。

「誰か召喚した? まさか、また私の隠し撮りのために、写真部の誰かを連れてきたんじゃないでしょうね?」

私は不審に思い、後ろで息を切らしている陸玖を振り返った。陸玖は目を白黒させながら、必死に首を横に振る。

「え、怜奈さん、何を言ってるんですか? 召喚なんてしてませんよ! 写真部の奴らも、今日ここで見かけた奴はいませんって!」

陸玖は心底困惑しているようだった。まあ、この状況で私に隠し撮りのための仲間を連れてくるほど、彼も馬鹿ではないだろう。私たちがここに来てから、彼の顔色はすでに土気色になっているのだから。

「そう……」

私はもう一度周囲を見渡したが、それらしき人影は見当たらない。気のせいだったのだろうか。そう思った矢先、突然、私の目の前に一人の少女が駆け寄ってきた。

「お姉ちゃん!」

私より少し年下に見える少女は、満面の笑みで私を見上げている。記憶にない顔だ。誰だろう?  見覚えがない。

「あの……どちら様でしょうか?」

私が素直に尋ねると、少女は目を丸くして固まった。隣にいた恵理も、不思議そうに首を傾げている。

「え? お姉ちゃん、覚えてないの? 私だよ、理沙! お母さんから聞いてないの? 私、今日怜奈お姉ちゃんの学校見学に来たんだよ!」

理沙と名乗る少女の言葉に、私はようやく合点がいった。理沙……そういえば、母がそんなことを言っていた気がする。

「理沙ちゃんが、あなたの学校を見学に来るかもしれないから、もし会ったら案内してあげなさいね」

しかし、私はその話を完全に聞き流していた。何しろ、前世の記憶が鮮明すぎて、昔のことは全く思い出せないのだ。理沙が私の従姉妹だということも、彼女が6年ぶりに会うということも、今の私には何の感情も呼び起こさない。目の前の少女は、私にとっては全くの初対面だ。

「ああ、そういえば、母が言っていたような……」

私は曖昧に答えるしかなかった。理沙は少し寂しそうな顔をしたものの、すぐに気を取り直したように満面の笑顔に戻った。

「そっか! じゃあ、今日はよろしくね、怜奈お姉ちゃん!」

満面の笑みを浮かべる理沙に、私は複雑な思いを抱いた。まさか、夏休み初日にこんなサプライズがあるとは。合宿の買い出しどころか、この子のお相手もしなければならないのか。私は思わず、遠い目をしてしまった。

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